第4章

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第4章

 週末の土曜日――…  奏さんに迎えにきてもらって、私は彼のマンションへと向かった。  私の家から車でおそよ20分のところにあるタワーマンションで、地下駐車場に車を止めた彼は、私の荷物を抱えながらまずはエレベーターホールへと向かう。  地下駐車場から直接彼の部屋まで行けるらしいけど、受付にいるコンシェルジュと何か話すことがあるらしい。  「ちょっとそこで待ってて。今話してくるから」  「あ、はい」  ロビー中央に置かれている大きなソファーの隅にちょこんと腰を掛けると、ぐるりとあたりを見回した。  きっといいマンションに住んでるんだろうなとは思っていたけど、一階のロビーを見ただけでかなり高級なマンションだとわかる。  ビルの一階は吹き抜けのホールになっていて、まるでどこかの高級ホテルのロビーのようだ。中央には吹き抜けの天井まで届きそうなほど大きな観葉植物も置かれていて、安らぎを与える空間となっている。  私が今座っているソファーの真正面からは、木々の生い茂った美しい中庭も見える。人工で作られた小さな滝が緑の合間から見えて、心がホッと落ち着く。  「南條様、おかえりなさいませ」    コンシェルジュの男性がそう言いながら頭を下げているのが見える。奏さんは彼と何かボソボソと短く話した後、再び私のところに戻ってきた。  「ごめん、待たせて。じゃ、俺の部屋に案内するよ。エレベーターはこっちなんだ」    彼は一番奥にあるエレベーターへと歩くと21階へのボタンを押した。  「とても綺麗なところですね」  エレベータの中を再びキョロキョロしながら、ポツリと呟く。セキュリティーがかなりしっかりしているのか、彼のカードキーをパネルにかざさなければボタンが押せないようになっている。  「ありがとう。気に入った?」  「もちろんです」  そう答えると、彼は嬉しそうに微笑む。
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