第4章

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 「うわぁ……すごい……!」  思わず感嘆の声が溢れる。  眼下には川というか運河が流れていて、ビルの合間からは東京湾が、そして遠くにはレインボーブリッジも見える。  「すごい綺麗……。毎日こんな景色を眺められるなんて……」  窓にそっと手で触れながら、そこから一望できる素晴らしい景色をため息混じりに眺める。  それに奏さんの言っていたように防音効果が高い構造になっているのか、眼下に見える喧騒や隣近所の音なんて一つも聞こえてこない。シーンとした家の中は本当に静かだ。  「よかった、気に入ってくれて。バルコニーにも出てみる?」  そう言って彼は私を外に連れ出す。  「うわぁー、すごいいい眺め……」  バルコニーからは海側の東京湾と、ビルの立ち並ぶ都心の景色と両方を眺めることができる。  奏さんの話だと、天気のいい日は屋上にある共有バルコニーから、富士山や東京タワーも見えるらしい。高所恐怖症の私としては下を覗き込まない限り、最高の眺めだ。  「俺も初めはこの眺めが気に入って、ここを選んだんだ。でも毎日見てると慣れてくるもんなんだな。今ではあまり感動がなくなってしまった」  まぁ美しい絵画も毎日見ると見飽きると聞く。きっと奏さんもこんないい景色なんて見慣れてしまったんだろうけど、でもなんだか勿体無い。  しばらく外の景色を二人で眺めた後、私達は再びリビングエリアへと戻ってくる。リビングルームのすぐ横はダイニングエリアになっていて4人がけのモダンなテーブルがある。  そしてその奥は大きなアイランド式キッチンとなっていて、何やら美味しそうな匂いが漂っている。  「今日は何を作ったんですか?」  「秘密」  そう奏さんはいうけど、匂いからして多分シーフード系じゃないかなと思う。トマトと海の香りが漂っていて、思わずお腹がぐぅっと鳴りそうになる。そんなお腹を片手で押さえながら、私はぐるりと部屋を見渡した。
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