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それから彼と色々な話題で話がはずむ。
奏さんの実家には道場があって、子供の頃から剣道や柔道で散々鍛えられた話とか、肇さんとはいつも比べられて嫌だった話とか、彼は自分の話を色々と私にしてくれる。
「やっぱり肇さんとはよく喧嘩したんですか?」
「もちろん。子供の頃はしょっちゅう喧嘩して両親に怒られた。仲も良かったけどいいライバルだったからな」
「喧嘩ってどんな喧嘩するんですか?」
(男の子だからもしかして殴り合いとか……?)
なんて事を考えていると、奏さんはククッと何かを思い出したように笑った。
「大抵は道場で剣道か柔道で決着をつけるんだ。実は今でもお互い腹が立った時はそうしてる。まぁ男なんてプライドの塊で、どちらが強いかヒエラルキーをすぐつけたくなる生き物だからな」
「ふふっ。でもちょっと見てみたいな」
奏さんと肇さんが剣道してるところとかすごくカッコ良さそう。
すると奏さんは「いつか見せてあげるよ」と約束してくれる。
「そう言えば、引越し先は見つかった?」
やがて夕食をほぼ食べ終わった頃、奏さんはワインを飲みながら私に尋ねた。
「はい、会社から近いマンションをいくつか見てて、その一つにしようと思ってるんです。防音室はないんですけど、今はもっと実用的な通勤時間かなと思って。来週あたりにでも契約書にサインしようと思ってます」
私の話を静かに聞いていた奏さんは、少し何かを考え込んだ後、徐に口を開いた。
「君に提案がある」
「はい、なんでしょう」
「俺と一緒に暮らさないか?」
私は食べようとしていたパエリアをぼとりと皿の上に落としてしまう。その後、しーん――…とした沈黙が私達の間を流れる。
しばし奏さんを凝視した後、一瞬聞き間違えたかなと思いながら、私は恐る恐る口を開いた。
「あ、あの……一緒に暮らすってどういう意味でしょうか?流石にそこまで奏さんにご迷惑をおかけするわけには――」
「そもそも迷惑だと思っていたら、今日ここに君を招いていない」
奏さんはワイングラスをコトンと置くと、私を真っ直ぐに射貫いた。
「俺の恋人になってほしい」
「え……こ、恋人!? で、でも、どうして……」
「君が好きだから」
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