第6章

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第6章

 「ただいまー」  ガチャリ――…と玄関のドアを開けると、誰もいない真っ暗な部屋に、つい習慣でそう呟いてしまう。  「奏さん、今日も遅いのかな……」  一歩足を踏み入れた途端、センサーが反応して玄関と廊下の明かりがパッとついた。  いまだに慣れないスタイリッシュで綺麗なマンションの部屋をキッチンへと向かって歩く。  パチンと電気をつけて壁にある時計をみると、ちょうど20時半。  「お腹ペコペコ。ご飯どうしようかな」  冷蔵庫の中を開けると、ブロッコリーが目についてそれを取り出す。  「ブロッコリーと何にしよう……?」  しばし冷蔵庫の中を睨んだ後、今度はパントリーを開けてみる。  「パスタ……かな」  パントリーからパスタ、ツナ缶を見つけると、それを取り出してカウンターに並べた。  「うーん、これでツナパスタとか……?」  とりあえず、深めの皿に水と調味料、それとツナ缶以外の材料を全て入れる。そして電子レンジに入れると、パスタが出来上がるまで部屋着に着替えようと寝室へと向かった。  奏さんと同居生活が始まってほぼ1週間。彼は本当に忙しそうで、夜もいつ帰ってきているのかさっぱりわからない。  朝も私が起きる頃にはすでにいなかったり、いてもすぐに出勤してしまいあまり顔を合わせることもない。  夕食も帰りが遅くなるから彼の分は心配しなくてもいいと言われた。今日も帰宅途中、「ごめん、今夜も遅くなる」とメッセージが入った。  (一緒に暮らせって言うからここに毎日帰ってきてるけど、全然家にいないし……)  奏さんが私と何をしたいのかわからないけど、これだったら私は自分の家に帰ってもいいんじゃないかと思ってしまう。  小さく溜息をつきながら着替えを済ませると、再びキッチンへと戻った。お皿を電子レンジから注意深く取り出して、熱々のパスタにツナを入れてぐるぐるとかき混ぜる。  「あ、パスタソースがない。……どうしよう。明日買い物行かなきゃダメだな」  今更ながらパスタソースもトマトソースもないことに気付いて再び冷蔵庫の中を見る。するとマヨネーズを見つけてそれを手に取った。
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