第6章

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 「マヨネーズかぁ………」  一瞬迷ったものの、マヨネーズとそしてついでに塩昆布も少々いれてパスタに混ぜる。その上に刻みネギを乗せてダイニングルームへと運んだ。  「いただきまーす」  奏さんには絶対に知られたくないような即席料理をフォークで絡めとると、口の中に入れる。うん、まぁ味も悪くないし、とりあえず炭水化物、タンパク質、それに野菜も取れている。  私はもぐもぐと食べながらしーんと静まり返った奏さんのマンションを何気に見まわした。  (それにしてもこのマンション、本当に静かだな)  私の家は当然ながら住宅街にあるので、夜はそれなりに静かだけどやっぱり車の通る音など聞こえてしまう。それに日中はそれなりの騒音がある。  なんとなく寂しくなってきて、テレビをつける。でもチャンネルを何回か変えてみるものの、見たい番組もないのでパチンと消す。すると再び静寂に包まれて、やっぱり落ち着かなくなってしまう。  (もう、これ一体なんの放置プレイなの?)  一緒に暮らしたいとか、好きだとか、恋人になって欲しいとか、一緒のベッドで寝たいとか半強制的に付き合わされて色々と身構えてたのに、逆に放置されてしまいそれを寂しいと思うなんて……そんな自分が本当に信じられない。  「あー、もう、こういう時はヴァイオリン弾こう!」  むしゃくしゃしている頭をふるふると振ると、キッチンを片付けてから早速ヴァイオリンを手に取った。  いつものようにケースから肩当てと弓を取り出して、チューニングをする。するとこの物寂しい静かな部屋にヴァイオリンの澄んだ音が響き渡る。  まず音階から始まって指の練習曲やエチュードをいくつか弾く。  「今日は何を弾こうかな……」  そう呟きながら、自分の家から持ってきた楽譜をいくつかあさる。その中から、私はエドゥアール・ラロのスペイン交響曲より第1章を選ぶ。  Symphonie Espagnole, Op.21 (by Édouard Lalo)はラロが1874年に作曲した作品で、確か彼の代表作と見なされている。  随所にスペイン的な主題が使われ、初めからとてもドラマチックに始まる曲だ。昔から私が好きな曲の一つ。
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