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「うん、まあ今は任意ということにしてるけどね、でも普通これ現行犯逮捕だから」
「げ、現行犯逮捕!?」
意味がさっぱりわからない。自分は善良な市民だと思っている。税金だってちゃんと毎年納めているし、選挙だってちゃんと参加して投票している。道端で困っている人がいれば、積極的に助けたりもしている。
「た、逮捕って一体なんの――」
「あなたが今手にしてるそれ、先ほど鵜飼さんから受け取った物ですよね?」
怖そうな刑事さんが私の言葉を遮ってピシャリと言い放つ。彼の言葉に私はキョトンとした。
「えっ?これですか?」
視線を右手に持っているケースに落とす。
「ええ、それです。中身が何かご存知ですか?」
「えっ?……はい。ただのヴァイオリンですけど……?」
首を傾げながら、先ほど知り合いに頼まれて取りに行ったヴァイオリンケースを見下ろした。すると刑事さんは厳しい顔をしたまま私に言い放った。
「うん、それね。ただのヴァイオリンじゃないんだよねぇ。とりあえず署まで一緒に来てくれるかな?すぐそこだから」
そうして私はわけがわからないまま、パトカーに乗せられ最寄りの警察署まで連れていかれることになった。
♬••••♬••••♬
「まぁただのヴァイオリンだったとしても十分犯罪なんだけどね。でもこれ、その辺の安いヴァイオリンじゃないんだよ。ニコロ ガリアーノって知ってる?」
「ええっ!??こ、これ、ニ、ニコロ ガリアーノのヴァイオリンなの!?」
連れてこられた警察署の奥にある小さな部屋で、私は目を丸めながらガタンと椅子から立ち上がった。
「あ、なんだ、このヴァイオリンの価値ちゃんと知ってるんだ。ちょっと、藤井さん、さっきの忘れずにメモしといて」
「ええっ!?ちょ、ちょっと、待ってください!!」
どうやら私には、裕福なお年寄りから骨董品や金目の物を騙し取る詐欺の容疑がかかっているらしい。
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