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「え? 何ですか、これ」
「読んでみて」
爽やかな黒ヒョウさんに促されて、文字を読み上げる。その紙には手書きで『ゲーム友達割3円で飲食できる券 回数:無限 期限:友情が尽きるまで』と書かれていた。
「えー! プレゼントって──」
「そう。今から使えるから、どうぞ」
「ありがとうございます。なんてお礼を言ったらいいか」
「礼なんて、いらないよ。俺、いつも孤独だったから。共通の趣味で語り合える友だちができて嬉しいんだ」
「く、黒ヒョウさーん!」
「パ、パズル坊やー!」
僕らは互いに向けて叫びあった。二人でゲラゲラと笑う。
「先に食ってて。俺の分も持ってくるから」
爽やかな黒ヒョウさんが部屋から出る。少し時間が経ち、爽やかな黒ヒョウさんが僕のトンカツ定食よりも一回り大きいトンカツ定食を持って現れた。驚きのあまり、僕の持っていた箸が空中で静止する。
「けっこう食べるんですね」
「オーナーは体力使うからね」
「なるほど」
「さ、どんどん食って食って。箸の動きを止めるな」
「はいっ!」
美味しさに感動しながら、一心不乱にトンカツ定食を食べ続けた。そして食べ終えると、満腹で身動きが取れなくなった僕たちは、日々の悩みを語り合った。日頃、悩みを誰にも相談できずに一人で抱え込んでいる僕。爽やかな黒ヒョウさんに打ち明けることで、窮屈だった心が、一気に広々としてきた。話を聞くと、どうやら爽やかな黒ヒョウさんも同じようだった。
「あー、ゲームの話題だけじゃなくて色々な話ができて良かったな」
「ええ。楽しかったです」
「たまには、現実の世界でこうやって会おう。次回から、他のゲーム仲間を巻き込みながら」
「いいっすね。でも、黒ヒョウさんは、メンバーが増えるごとに『3円で飲食できる券』を発行することになるでしょうから大変ですね。大赤字だ」
「なるだろうけど、心配いらないよ。お陰様で、この店は大黒字なんだから。もちろん、これからもだ」
「さすが黒ヒョウさん。凄い自信だ」
「はっはっはっ」
僕らは、閉店時間まで楽しく大騒ぎした。
(了)
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