プロローグ

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俺の名前は、石川弘宣(いしかわひろのぶ)。 32歳、独身。 職業は、喫茶店のマスター。 8年前に亡くなった父親から継いだ店だ。 って言っても、シャッターだらけの寂れた商店街の中にある、古ぼけた喫茶店で、おしゃれさは皆無。 経営もギリギリだ。 加えて、俺は地味。 子供の頃からずっとそう。 誰かに影響を与えることなんてない、いてもいなくても誰も困らないような、そんな存在。 特に山も谷もない、平坦な道をずっとボケっと歩かされてるようなそんな毎日。 変化なんかいらないけれど、ふと自分の存在は必要なんだろうかと考えてしまう日もある。 このまま歳をとっておじいさんになって、そして孤独に死んでいくんだろう。 そう思っていたのに…。 まさか、あんな美しいお嬢様に突然ベタ惚れされるなんてーー。 この頃の俺は、予想もしていなかった。
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