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俺の母さんは、7歳の時に病気で亡くなった。
それからは父さんが男で一つで育ててくれた。
そんな父さんが亡くなったのは、8年前、俺が24歳の時。
大学院を卒業して就職したばかりの暑い夏の日だった。
死因は心筋梗塞だか、おそらく過労。
加えて、暑さからくる熱中症もあったのではないかと医者から言われた。
倒れたのが夜中だったため、発見されるのが遅れて、翌朝冷たくなって見つかった。
父さんはかなり無理をしてたんだと思う。
お金の心配をさせたくなかったのか、俺には一切話してくれなかったが、喫茶店で働きながら、空いた時間にアルバイトもしていたと、隣の酒屋さんから聞いた。
自分の生活もかなり切り詰めて、俺を大学院まで行かせてくれた。
そして俺は、大企業に就職する代わりに父親を失った。
こんなに大切に育ててもらったのに…だ。
罪悪感と喪失感から、俺は仕事を辞めた。
そして父さんが大切にしていた喫茶店を継いだ。
それがせめてもの償いだと思ったから。
父さんが遺したレシピを見ながら必死で喫茶店を営業し続けていると、ある日1人の女性が現れた。
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