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名前は、山田桃子さん。
小柄で可愛らしい人だった。
彼女はいつもサンドイッチを注文してくれる常連さんになった。
美味しい美味しいってニコニコしながら幸せそうにサンドイッチを食べる姿に、俺は自然と惹かれていった。
そして、彼女も俺のことを好きだと言ってくれて…、交際が始まった。
彼女と過ごす時間はとても幸せだった。
父さんが死んで、心にポッカリ空いた穴を彼女が全て埋めてくれた。
付き合い始めて3ヶ月が経った頃、彼女から神妙な面持ちで相談をされた。
桃子「お父さんが病気で…、お金が必要なの…。手術できないと、命は助からないだろうって…。」
彼女には俺と同じ思いをさせたくない。
父親を亡くす悲しみなんて、味合わせたくない。
そう思った俺は、喫茶店の土地を担保に200万を借りた。
そして彼女に渡したが…、彼女はそれっきり俺の前から姿を消した。
友人たちは、結婚詐欺だと騒いだ。
結婚の約束はしてなかったんだから結婚詐欺ではないと、俺は言った。
いや、言い聞かせた。
あんな楽しい時間が嘘だったなんて信じたくなかったから。
お金を渡したことは後悔していない。
きっとお父さんは手術をして元気になり、彼女は今、どこかで幸せに暮らしているはず…。
あれからもう3年が経った。
俺はまだ彼女を忘れられずにいる。
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