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「ピョン少佐。間もなく目標空域です」
僚機からの声掛けで、自身も改めて自分の飛んでいる場所をレーダー上で確認し、ピョンの部隊は包囲されている旅客機の真下からほぼ垂直に上昇しながら、一気に旅客機との距離を詰めた。
「目標視認」
ピョン達のはるか上空にいる旅客機との距離が詰まっていくにつれて、それを取り巻く戦闘機と旅客機の状況は、ピョンの目にも鮮明に把握出来るようになって行く。
旅客機の周りにくっついている敵戦闘機の数は9。
予想をしていたよりも多い機数に、コックピット内で多少ペースを乱されたような仕草をみせたピョンだが、ここまで来て後戻りなど出来ない事は、彼女が一番良く分かっている。
ピョンは目標に向かってぐんぐん高度を上げていく自機の中から、デルタ航空機にへばりつくように飛んでいるミグ戦闘機に対して警告を行った。
「デルタ航空機周辺を飛行する国籍不明機に警告する。民間の旅客機に対する正当な理由のないインターセプトは、国際法に違反する行為である。直ちに旅客機への妨害行為を中止し、我々の誘導に従って進路を変更せよ。なお、貴機が我々の指示に従わない場合、我々はあなた方の機体を攻撃し、破壊する権限を有している」
ピョンがこの警告を発したことで、敵の戦闘機群はようやくピョン達の接近に気がついた様子で、やがて旅客機の周を飛んでいたそれぞれの戦闘機が不規則に散らばり、そのうちの1機が滑るように旅客機の後方へと位置を移した。
この光景を見たピョンは、すぐに味方のアメリカ軍機に敵戦闘機への攻撃命令を下し、自身は旅客機の後方に回り込んだ戦闘機のもとへ急接近すべく、自機のパワーを上限まで引き出した。
国籍不明機は、アメリカ軍機の警告を受けてから旅客機の後方へと回り込んだ。
それはつまり、アメリカ軍機の存在に気がついたミグ戦闘機が、アメリカ軍機が現地に到着する前に旅客機にミサイルを放ち、撃墜しようとしているのだと、ピョンは気がついたのだ。
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