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その直後、ピヨンの操る機体と正面から接近してきた敵戦闘機が、ごく近距離ですれ違い、ピヨンは敵のパイロットを確認するために、敵戦闘機のコックピット内を目視で確認すると、ある重大な事実に気がついた。
コックピット内にパイロットの姿が無かったのだ。
「無人機? ミグを無人機に改造している?」
確かに、無人航空機に爆弾やミサイルなどを搭載した無人戦闘機は存在する。
しかしそれは通常ならもっと小型で、ミサイルなどの搭載量もミグ戦闘機のような有人戦闘機に比べるとはるかに少ない。
そう。
今ピヨンが相対しているミグ戦闘機は、本来ならばコックピット内に人が搭乗して機体を動かす有人戦闘機だ。
しかし、たった今ピヨンが見た敵戦闘機のコックピット内には、確かにパイロットは乗っていなかった。
「敵戦闘機は無人機だ。詳細は不明だが、恐らく敵はどこかの地上施設から遠隔操作を通じて、あの戦闘機を動かしているものと思われる」
ミグのような大型の戦闘機を遠隔操作で完璧に飛ばすと言うのは、それだけでも世界各国の軍事関係者に大きな影響を与えるだろう。
だが、今彼女達にそんな事を議論している暇はない。
ピヨンは見方機全機に自分の見た光景を報告し、注意を促した。
しかし、このピヨンの仮説に意を唱えた者がいた。
「隊長。この無人機は、遠隔操作されている戦闘機なのでしょうか? 先程隊長が放った二発目のミサイルを敵が回避する様子を見ていました。遠隔だとしても、人が操作していたらあんな無茶苦茶な機動でミサイルをかわすでしょうか?」
仲間にそう指摘をうけたピョンは、言われてみれば確かにと言ったような反応を見せ、自身の頭の中で状況を整理しはじめた。
確かに遠隔操作でも敵戦闘機を人が動かしているのであれば、どうしても日々の訓練を通じて得た技術を利用して回避をしようとする。
敵戦闘機を操っているのが熟練した操縦士ならば、熟練する程そうやって回避するはずだ。
人と言う生き物は、普段培った経験を元に行動する生き物だ。
それはイコール、人は経験を積めば積むほど、無意識のうちに染み付いた技術を総動員してしまうからである。
ただピョンが放った二発目のミサイルを敵が交わした時、そのミサイルの交わし方にはピョン自身も違和感を覚えていたのは確かだ。
「確かにあの回避運動時の機動の仕方。あれは熟練度の高いパイロットの操縦と言うよりは、素人の子供が戦闘機シューティングゲームをやっているような動きだった。私が敵側だったとしたら、例え遠隔操作をしていたとしても、あんな無理な機動でミサイルを交わしたりはしない」
それがピョンが導き出した、見方機への回答だった。
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