7人が本棚に入れています
本棚に追加
「ジャバウォックを森に転送したのは貴方達?」
「だったらどうした?」
よく見ると、青黒い肌……魔族か。
「理由があっての事だろうけど……見逃せないわね」
「ケッ!俺らとやり合おうってのか?」
「場合によってはね」
「満身創痍の癖に、口だけは達者のようだな!」
「私は満身創痍に近いかもね……けど……」
「他の奴らなら何とか出来るってか?はっ!笑わせんな!」
そう言って、魔族の一人が私に突っ込んできた……が。
「甘い!」
魔気を込めた一撃を、奴の鳩尾にお見舞いしながら躱す。
「ぐぉ!?」
予期せぬ一撃に、突っ込んで来た魔族が蹲る。
「満身創痍と思うなかれ……よ!」
「ちっ!ガロン!やれ!」
蹲って無い方は、ガロンと言うらしい。
「わかった!ゼロン!」
蹲っている方は、ゼロンと言うらしい。
❮闇の刃~ダーク・カッター~❯
ガロンが、黒い刃を私に飛ばして来た。
❮光の壁!❯
ラミアちゃんの魔法がそれを防ぎ、セシル先生がガロンに突っ込む。
「覇王裂炎掌!」
「ぐがっ!!」
セシル先生の渾身の一撃が、ガロンの鳩尾を襲う。
と同時に、カールが間合いを詰めて炎の剣をガロンに叩きつける。
「ぐがぁっ!!」
「ガロン!!」
蹲っていたゼロンが、ガロンに向かって駆け寄るが……。
「魔波疾風脚!」
「がはっ!!」
私の技がそれを阻む。魔族相手にここまでボコボコにできるとは、夢にも思わなかった。
「ち……くしょう……」
「さて……ジャバウォックをここに転送した目的は?」
「言わん……ぐふ!」
私はゼロンを踏みつけた。
セシル先生は、ガロンを取り押さえ、それをラミアちゃんとカールが何処からともなく取り出したロープで縛る。
「もう一度聞くわ…目的は?」
「言わ……ぐふ!!」
また踏みつけた。
「口が堅いのか、単に意地でも言わないのか…どっち?」
「ふん……」
これじゃ埒が明かない……どうしたもんか……。
『ジーナ…代われ』
『え?でも……』
『良いから!お前の口調真似するから!』
『わかったわよ……』
瞬時に、私とクロウの意識が入れ替わる。
「ゼロン……私の目を見なさい……」
「目……?あ……」
体はクロウの意識が支配してはいるが、見ることはできる…ゼロンの目が虚ろになっていく。
「もう一度聞くわ?目的は?」
「それ……は、主の……命令で……」
「主?誰?」
「グラハム・ヴォルドー様…の……右腕、エナン……ブリッツウォール……様……」
「エナンが命じたの?」
「あ……あぁ…」
ここで、クロウと入れ替わった。
「ジャバウォックを転送したのはなぜ?」
「我が一族の……領土を……広げる…た……はっ!!」
クロウが使った術が解けたらしく、ゼロンが我に返ったが、何を言おうとしたかわかった。
〈我が一族の領土を広げるため!〉
なんて事?クロウの戦友がそんな事……。
「俺は……一体…」
「先生!聞きましたか?」
「えぇ!ばっちり!」
「二人をどうします?」
「ギルドへ…でもどうすれば……」
こいつらを野放しには出来ない…だが、連れていく方法が……あ!ある!
「先生!二人を抑えれますか?」
「どれくらい?」
「十分か、十五分くらい!」
「三人の力を借りれば何とか……」
「じゃあ、お願いします!」
「どうやるの?」
「転送魔法陣の痕跡を使って、新しく転送魔法陣を作り直します!」
「簡単じゃないわよ?」
「はい!伊達に文献漁りをしていた訳ではないので!」
「わかったわ!」
齢十五歳で転送魔法陣を作れるのは、多分私くらいだろう。
最初のコメントを投稿しよう!