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「さて……」
私は、アカデミーの前で姉の魔力を探す。
「あ、居た居た!」
思ったよりも近くに居てびっくりしたが、まずは手続きをしなければならない。
「えと……」
門をくぐり、辺りを見渡すと、前方に人だかりがあった。
『あそこかな?』
フラフラっと歩いていくと、急に後ろから肩を掴まれた。
「ッ!」
私は反射的にその手を掴み、人だかりのない場所へ投げ飛ばした。
「おぅッ!!」
肩を掴んだのは男のようで、地面に叩き付けられると同時にくぐもった声を出した。
「ぐ……流石はウィルハート家の……」
「私の家の事ッ……」
言いかけて、姉の魔力が近付いて来るのに気付く。
「校長……だから言いましたよね?」
「ぐ……そうだな……」
私は振り返らず、何が何だか分からない状況を理解しようとする。
「悪い悪い!お前の力を試すために、殺気を押し殺して近付いたんだがな……」
「……あれで殺気を押し殺してたんですか?」
「はは……ぐうの音も出ん」
投げ飛ばした男は、ヘラヘラ笑いながら立ち上がる。よく見ると、無精髭を生やしてはいるが、そこそこのイケメンで、ガタイも良い。
「ジーナ、ゆるしてあげて?」
「姉上……」
ここでようやく、私を後ろを見た。
「フフ……ここでは“姉上”はやめて欲しいわね」
「あ、うん……姉さん……」
「フフ……よく出来ました」
相変わらず、変わらない笑みを浮かべて、クスクス笑う。
「ジーナ!合格だ!」
急な校長の合格宣言に、私は目を点にした。
「へ?」
「なんだ?その煮え切らない表情は?少しは喜べ」
「いや……その……」
私は腑に落ちない言い方をする。
「なんだ?言ってみろ」
「えと、中等部の時の様なガチガチの試験だと思ってまして……」
「なんだ!そんなことか!マリア、説明してやれ!」
急なパスに、姉は一瞬固まったが、はぁ……とため息をついて口を開く。
「建前だけど、私が貴女を“推薦”した事になってるの……まぁ推薦はしたんだけど……」
「うん……それで?」
「で、一度貴女の実力を見て、合格の基準に達していれば、筆記免除の首席合格って話になったの」
「実力って……さっきの?」
「そう……」
姉はまた、ため息を付いて項垂れた。
「丁度推薦枠も一人分空いてたしな!」
「校長が、無理やり一枠開けたんでしょ?」
「そうだったか?ははは!」
校長は、読めない人だと感じた。そして、あれだけで首席合格と言われても、何が何だかさっぱりである。
「まぁおちゃらけるのはこの辺にして、ウィルハート伯爵家には、合格の通知を出しておく!」
「はぁ……」
「本格的な授業は、来週からだ…それまではのんびりガレノ・イーリスの観光でもして行け!」
校長は、ニカッと笑って私の肩をバシバシ叩く。
「校長……いい加減怒りますよ?」
私は睨んで言う。
「悪い悪い!」
彼はそれだけ言うと、後ろ手で手をヒラヒラさせて、人だかりへ消えて行った。
「さて、私もそろそろ戻らないと……」
言い終える前に、お父様から渡された封書の事を思い出し、「待って!」と言って遮った。
「ジーナ?どうしたの?」
「これ!お父様から!」
言って懐から、封書を取り出し渡した。
「……」
封を開け、しばらく無言で中身を確認した。
「あぁ、これね……ジーナありがとう」
「うん……中にはなにが?」
「なんでも無いわ!気にしないで」
と言われも、中が気になるが、聞かないことにした。
「じゃあジーナ、次は来週会いましょ」
「はい!あね……姉さん」
私の言葉を聞き終わり、姉はアカデミーの中へ入っていった。
『やっぱり姉さんは変わらないなぁ……』
心の中で呟きながら、来週までの宿をとる事にした。
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