逃走

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「ゼロンですか?ガロンですか?」 「ゼロンです」 「どちらか一人でも口を開きましたか?」 「いえ…全く…」 「ガロンと話せませんか?」 「大丈夫…ですか?」 「多分…」 「分かりました、ガロンのいる場所へ案内します」 「はい」 部屋の外に出ようと、立ち上がったメルシーさんは、「ふぅ…」とため息を付いた。 そして、扉を開け「こっちです」と私に手招きしたので、彼女について行く。 「誰が何を話しても、口を開こうとしません…多分貴女でも…」 「それならそれで…」 ギルドの地下に案内され、地下へと降りて真っ直ぐ進む。 すると、鉄格子の付いた部屋にたどり着く…六つ部屋がある。 「ここです…」 六つの部屋の一つに、メルシーさんが立ち止まって言う。 「はい」 「決まりで、私が外で待機しています…出る時は声掛けて下さい」 「分かりました!」 返事して、そのまま中へ入った。 「久しぶりね…」 「お前か…何の用だ?」 「ゼロン…逃げたらしいじゃない?なんで貴方は逃げなかったの?」 「……」 「何かやる事があって残った?」 「……」 何を言っても答えない……警戒心が強すぎるのだろう…なら!! 「パチン!」 指を鳴らして、防音魔法+会話隠蔽魔法を掛けた。 「何をした?」 「聞かなくてもわかるでしょ?」 「防音と会話隠蔽魔法か……?」 「そ!だから外には私たちの会話は聞こえない」 「けっ!変なやつだ!」 「何処が?」 「全部だよ……俺たちと似た魂しやがって」 「まぁそうか…あんた達からしたら変よね」 微笑んで、彼をみる。 「何が知りたい?」 「色々…でも、一番はグラハムとエナンについて知りたいかな?」 「けっ!お前みたいな女が、首を突っ込んでいい話じゃない!帰れ!」 「グラハムとエナンは、対立してたんじゃないの?」 「ッ!子娘!なぜそれを!!?」 「図星ね?」 「ぐっ……」 動揺すら隠せずに発狂。まぁ、クロウの前世の記憶を見たから知ってるだけだが……。 「敵対してたのにグラハムの右腕はおかしい…そうじゃない?」 「なぜ知りたがる?」 「知らなきゃならない運命(さだめ)らしいのよ」 「はぁ?意味がわかんねぇ……」 「でしょうね……私だって最近知ったから」 「お前のその魂と関係あるのか?」 「多分ね」 「ちっ……」 ガロンは、「はぁっ」と深いため息をついて、ゆっくりと口を開いた。 「仕方ねぇな…他言無用だ!良いな?」 「えぇ」 「グラハムは、確かにエナン様と対立していた…しかしな…」 「しかし?」 「直接対決した後から、エナン様の様子が変わった」 「なんで?」 「憶測だが、されたのかもしれない」 「洗脳!?」 「あぁ……あくまで憶測だけどな…」 「じゃあ!?」 「洗脳が本当なら、グラハムの意のままに操られてるんだろうよ」 ガロンは、苦虫を奥歯で噛み潰したような顔をして言う。
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