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ラウルフットに戻った頃には、東側の転送陣の魔力を感じなくなっていた。
「ぐっ……」
奴は、これが狙いだったのか…複数の転送陣を壊させる事によって発動出来る……“高魔転送陣”。
これをまんまと発動させてしてしまった……こうなると、送られて来るものを倒すまで、転送陣を壊すことが出来ない。
目の前に、巨大な転送陣が生成されており、そこから禍々しい魔力を感じる。
高魔転送陣は、発動時一体だけと言う制限があるが、強力な魔力を持った魔物を転送出来る。
「ぐ……」
ゆっくり転送陣に近づきながら壊そうとするが、気が動転していて無理なことに気づけていない。
「ジーナ!」
姉さんが、私の手を引き転送陣から遠ざける。
「姉さん……」
「あれは壊せない!私にも分かるわ!」
「そ……そうだった!」
正気を取り戻し、ゆっくりと転送されてくるものの正体を探る。
『まさか…』
『あぁ……そのまさかだ!』
転送が完了した転送陣を見て、腰を抜かしそうになった。
「ダーク……ドラゴン!」
「ダークドラゴンって、天災級の魔物でしょ?」
「うん……天災級の魔物の中でも…最もタチが悪い奴…」
そう、街を一夜にして消す事が出来うる…と言われているほど、強力な魔力を持った魔物…。
ギルドでは、魔物はC級からS級までのランクに分けられているが、S級よりも遥かに強い魔物を天災級と呼んでいる。
「ぐ……」
禍々しい魔力に当てられ、足が動かない…体も動かせない。
「姉さ……逃げ……」
「ジーナ……貴女も……」
姉さんが言い終わる前に、奴が此方に気付いて殺気を放つ。
「ぐぅ…」
禍々しい魔力に当てられたうえ、殺気まで放たれると…余計に動けない。
ダークドラゴンが、頭を上げて口に魔力を溜め始める。
それが終わると、そのまま頭を下げて強力なブレスを吐く。
もうダメだ……そう思った瞬間、目の前に見覚えのある人影が割って入る。
《ホーリー・ウォール》
「お……お父様!?」
どう見ても、お父様にしか見えない…姉さんにもそう見えているだろう。
「ジーナ!大丈夫かい?」
「お父様!どうしてここに??」
「メルシーに呼ばれてね……」
「ギルドマスターに?」
「うん、詳しい話は後にして…此奴を何とかしないとね」
お父様はブレスを防ぎ切り、私と姉さんを抱えて後ろへ下がる。
「助かりました!」
「うん!しかし、流石は天災級だね……魔力が半端ない」
「お父様は平気なのですか?」
「まさか!流石に私も魔力に当てられたよ!」
「じゃあなんで?」
「可愛い娘達のピンチに、動けないようじゃ父親として失格だからね……」
お父様は、今まで見たことないような笑顔で、私達に向かって言う。
おかげで腹が決まった!私は、懐に忍ばせていた特製ドリンクを飲み、全身に魔力を巡らせた。
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