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姉と別れ、近くの宿をさがす。
記憶が正しければ、アカデミーの裏あたりに一件宿屋があったはずだ。
「店の名前は……」
確か“イデア”……古代語で、“楽園”って意味だったはず。
「しかし……」
試験があんなもので良いのかと、頭を抱えながら裏へ回る。
「あった!」
回って直ぐに看板を発見した私は、小走りで店へ向かい、扉を開ける。
「いらっしゃい……」
店主らしきおばちゃんが、愛想の無い歓迎の言葉を発する。
「あ、はい……えと……」
「泊りかい?」
「あ!はい!来週まで取りたいんですが、空いてますか?」
「来週……あぁ!空いてるよ」
「なら、それでお願いします」
「わかった……なら、二十リーフになるよ」
「はい」
私は、お父様からもらった袋から、きっちり二十リーフ取り出して渡す。
「食事は別料金で、この階の奥に酒場兼食堂があるからね」
「はい!分かりました!」
私は、部屋の鍵を受け取り三階へ……そして、上がってすぐ左の部屋に入った。
もちろん、鍵には部屋の番号が書かれた札が付いてるので、間違う訳はない。
「来週まで会えないのかぁ……」
会おうと思えば会えるのだが、アカデミーの決まりで、たとえ肉親であっても、会うことが許されていないのだ。
「荷物は……心配ないか……」
今日手紙を出しているなら、遅くても明日の夕方には届いている。荷物は、入学の一日前か、当日の昼までには届くだろう。
「疲れたし、まだ昼だけど寝よう……」
ベッドにダイブして、枕に顔を埋めると、ゆっくりと眠りに落ちて行った。
「おい!……ウ!」
「ん……」
「お……ろ!」
「あ?」
「クロウ!起きろ!」
「はっ!!」
俺は聞き覚えのある声で飛び起きる。
「エナン……どうした?」
「どうしたもこうしたも…朝早くに出るって話しだったろ?」
「あぁ……そうだったな」
立ち上がって、まだ暗い空を見上げる。
「あいつが根城にしている場所は、もう近いのか?」
「あぁ!もうそんなにかからない」
「そうか……だが、良かったのか?」
「何が?」
「嫁さんほったらかして?もうすぐ産まれるんだろ?」
「あぁ……だが、妻とは話をして、“産まれる前に必ず帰る”と言ってある……大丈夫だ」
「なら良いんだがな」
焚き火の火を消しながら、俺は呟く。
「さて……行こう……奴の所へ」
「あぁ……」
俺とエナンは、唯ひたすら前へと進んだ。
「う……」
息苦しさで目が覚めた。顔を埋めたまま、寝返りを打つ事無く眠ったからだろう、目を覚ますと埋めたままだった。
「はぁ……」
ゆっくり立ち上がり、窓の外を見るともう日が落ち、暗くなっている。
「お腹空いた……」
私は目を擦りながら部屋の鍵を取り、部屋から出て鍵を閉め、ゆっくり一階へ降りた。
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