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反対に「別れの曲」は、本当は「別れの曲」なんかじゃないといえるかもしれない。
だいたい「別れの曲」なんて題名はショパン本人がつけたものではなく、日本人が勝手にそう呼んでいるだけなのだ。
「奏太、この曲はね、別れをうたった曲じゃないのよ。ショパンが、自分の故国であるポーランドへの愛を表現するために作られたと言われているわ。現にショパンは、彼の弟子のアドルフ・ゲートマンとの練習の時、国を思って泣き叫んだって話も残っているの」
俺は不意に、小さい頃に母さんから聞いたその逸話を聞いた事を思い出した。
そうか、この曲は悲しい歌なんかじゃないんだ。それならば俺は、この曲を弾こう。
今は一人だ。誰も聞いてくれる人はいない。
だけど、それがどうしたというのだ。
離れ離れになったとしても、伊織さんへの思いは変わらない。
愛を、うたおう。
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