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きっと俺は、とんでもない事をしているのだと、そう思ってしまった。
人に言えない。恥ずかしい。
伊織さんは、俺との関係をどう思っているのだろうか。もしも俺といる事が誰かにばれたら、伊織さんはどんな振る舞いをするのだろうか。
そんな考えが脳裏に過ぎると怖くなる。 でも、伊織さんとは離れたくない。
俺は、伊織さんが好きだ。たまらなく、好きだ。
2
伊織さんと俺の出会いは、ごく些細な事がきっかけだった。俺が学校帰りに立ち寄った書店で、店員に本の注文をしたら、その店員が伊織さんだったのだ。
「あの、『ブザービートの最果て』っていうマンガ、ありますか?」
おずおずと聞いた俺を、伊織さんはにこやかな表情で対応してくれた。綺麗な人だな、と思った。二十代前半ぐらいかな。こんな綺麗な人が彼女だったらいいのにな、と思いながら待っていると、しばらくして伊織さんがお目当てのマンガを持ってきてくれた。
「お客様、お待たせ致しました」
そう言って本を差し出した伊織さんに、俺はなぜか笑顔になって「ありがとうございます」と言っていた。
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