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それでも俺よりは、大きい。もう一人の佐原真琴も、興味深いなと言いたげな眼差しを向けてくる。ちなみに真琴は、名字のせいか「サバク」というあだ名で呼ばれている。
将来の夢は裁判官だと言っていたから、その意味でもピッタリなあだ名だ。
「本屋の店員」
一目惚れをしたことを知られたくなくて、俺はわざとぶっきらぼうな口調で答えた。伊織さんからもらった紙は、二人に見つからないように、こっそりポケットに入れた。
「へえ。お前、本屋の店員さんと面識なんかあったんだ!」
サバクが驚いたように言った。
「でもさ、いくら面識があるって言っても、相手は店員で、しかも歳上だろ? 親戚とか友達の姉ちゃんってわけでもなさそうだし。なんか、不思議な関係だよな」
この時の洋平の言葉に、俺は平静を装って「そうか?」と返すのに必死だった。俺の演技が上手かったからか、伊織さんと恋仲になった今でも、まだその関係は気付かれていない。
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