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伊織さんには、俺がそんな事で悩んでいるなんて言っていない。言ったとしても、きっと「はっきりと付き合いたくないって言えばいいのよ」と軽くあしらわれるだろう。
俺が好きな伊織さんは、クールな女性でもあった。俺が年下だからなのか、決して甘えてはこない。
それどころか、伊織さんの方が俺の手を引いて歩いていく。
そんな風な立ち振舞いをしていた。これが大人なのかと、圧倒される。
きっと伊織さんは、少し何かがあっただけで感情を左右される俺とは、正反対の性格をしているのだ。
二人で体を重ね合わせた、数時間前もそうだった。初めての経験で震えが止まらなかった俺を、「大丈夫よ」と笑い、やり方まで教えてくれた。
ベッドに入る前、他人の前で全裸になるのを躊躇っていた俺を見て、クスクスと笑っていた。俺が、人前で上の服を脱ぐことはあっても、全裸で他人の前に姿を現したのは、幼少期を除けば今回が初めてだった。
そして、全裸の異性を見るのも、俺が覚えている限り初めてだった。
「小柄な割には綺麗な体ね。鍛えているの?」
俺の肩から腕、胸から背中へ手を這わせながら、伊織さんは言った。
「バ、バスケットボールを……」
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