亜美の物語り

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         -19-  国立大学の合格発表の日が来た。私は、一人で電車を乗り継いで国立大学へ向かった。大学のキャンパス内の掲示板に合格者の氏名が掲示される。  人ごみであふれる掲示板の前。落胆して崩れ落ちるもの。嬉しくて、または悲しくて泣き叫ぶ者たち。みな感情をむき出しにしていた。私は、落ちた時、あるいは合格した時どうなるのだろう。私はしばらくの間、熱気あふれる集団から離れてその様子を伺っていた。  高校に入学した時からこの国立大学を目指した。最後に回り道をして、B判定で臨んだ入学試験。さすがに詰めが甘かった。  しばらくして、私はふと踵を返した。もうどうでもよくなった。溢れる涙を拭いながら私はキャンパスの出口に向かって歩きはじめた。その時・・・ 「クリス!」  後ろから懐かしい声が聞こえた。
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