第十話 これまでのお話は全て伏線である(おおげさ)

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第十話 これまでのお話は全て伏線である(おおげさ)

前回までのまとめ〜~  大魔法使いであるカイラのもとに、目を見るだけで相手に誘惑魔法をかけてしまうというユキという女が解呪の依頼に訪れた。  自分の魔力に自信のあったカイラだったが、思いがけず強力な呪い、完全に誘惑されてしまい、甘えん坊の顔がバレてしまう。  その後も解呪を色々試みるカイラと、ユキの強力な呪いとの攻防は続いていく……。 これまでのまとめ〜〜終〜〜 その日、カイラの家の前に、随分と立派な馬に乗った人物が三名ほど訪れた。 一人は地味ながら高級そうな防具を身に着けており、明らかに高貴な身分であることがわかる。 「何だ、仕事の依頼か?」 家からのっそりと出てきたカイラは、その男達に対して一切臆することなく偉そうに言った。 高貴な身分らしい男は、カイラを見るなり、膝をついて頭を下げた。 「私は、ここから少し離れた場所にある、ユースト市国の王子、リダと申します。 大魔法使いカイラ殿、お願いがあって参りました」 リダの丁寧な挨拶に、カイラはフン、と鼻を鳴らしながらも家に招き入れた。 「話を聞こう。ただし、リダ、お前だけ家に入れ。俺は人を殺す武器を持った者を家に入れる趣味はない」 カイラは、リダの横に立つ従者の腰の銃を指さした。 リダは少し考えたようだったが、すぐに「わかりました」と答えて、従者にここで待つよう命令し、カイラの家に入って行った。 「リダといったな。依頼は何だ」 単刀直入にカイラはたずねる。 「はい、実は我が国のスパイからの連絡により、近々国に危機があると……」 「理由も経緯もいらない。依頼内容だけ言え」 「依頼内容だけ?」 「理由を聞くと、情が入るからな。俺は機械的に、依頼をこなすだけにしたい」 カイラはそっけなく言うが、顔はニヤリと笑っていた。 「ま、貴様は以前会ったこともある仲だからな。相当な依頼でない限りは受け付けてやる」 「ああ、お気づきでしたか」 リダは少しだけ気を許したように笑う。 「あの時はお世話になりました。野盗に襲われて、荷物を全て奪われてしまっていたのです。あの時は食事をありがとうございます」 「気にするな。こっちも呪いの効果を試すために貴様を利用させてもらったんだからな」 カイラも気を許したように笑う。 そう、リダは一度ここに来た、あのチャラい旅人だった。 リダはそんな機嫌の良さそうなカイラを見て、少し考え込むと、意を決したように言った。 「カイラ様、無理を承知でお願いでございます。 あなたの家で匿っている『疫病の魔女』を、こちらに引き渡して頂きたい」 「……誰だそれは」 カイラは怪訝そうな顔でリダを見つめた。 「疫病の魔女だと?俺はそんな人物を匿っていない」 「いえ。確かにおります」 リダはそう言うと、素早く立ち上がり、腰から剣を取り出した。 その剣先は、ある部屋へと向いていた。 「疫病の魔女ユキ。彼女がここにいることは、あの時にわかったのです。入念に準備を整え、今こうして参ったわけであります」 リダは険しい顔で、ユキの住み着いている部屋へ剣を向けている。 部屋のドアが開く。 「ああ、貴方がまさかあの小国の王子様だったなんてね」 そう残念そうに言いながら無表情のユキが現れ、リダの顔をじっと見つめた。
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