第十話 これまでのお話は全て伏線である(おおげさ)

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「おい!目を見るな!」 カイラは一瞬にして理解し、そして、叫んだ。 しかし間に合わなかった。 リダはユキの目を見た瞬間に膝をついて倒れ込んだのだ。 ユキはリダに近寄り、リダの髪の毛を掴んで無理やり顔を上げさせた。 「王子様?ご機嫌はいかがですか?」 「ああ美しい人だ」 髪の毛を掴まれたままなのに、リダはうっとりとユキを見つめた。 「こんなに胸が苦しいのは初めてだ。あなたを私のものにしたい……。どうか一緒に城に来てもらえないだろうか」 「あら素敵ね。でも、剣とか銃とか怖いわ。そういうのは、お城に持って帰って欲しいわ」 ユキがそう優しく言うと、リダは惚けた顔のままコクコクと頷き、立ち上がるとふらふらと家の外に行ってしまった。 「ふう、これで物騒なものは持って帰ってもらえますね。普通の人は冷たい水をかけられるか一日経たないと誘惑魔法は解けないので、今夜くらいまでは大丈夫でしょう」 「ユキ、どういうことだ」 ニコニコと微笑むユキに、カイラは怖い顔で近づいた。もちろん、目を合わせないように。 ユキは困ったように首をかしげた。 「あの、私魔力は強いんですが、素早く魔法を発動できないんですよ。だから、自分に呪いをかけたんです。そうすれば目を見ただけで相手を戦闘不要に出来るので。私、頭良くないですか?」 無邪気に言うユキを、カイラは蔑むような目で睨む。 「そんな事を聞いているのではない。疫病の魔女とはなんだ。なぜリダはお前を狙ってきた。俺のところに来た理由は何だ。自分で呪いをかけたのなら解呪が目的ではないだろう!」 「そんなにいっぺんに問われても答えられません」 ユキはニコニコと言う。 「それに、カイラ様は理由や経緯は聞かない主義ではなかったですか?さっき王子様にそうおっしゃってたと思いますが……」 「それは依頼に限った話だ」 カイラはイライラと言った。次の瞬間ユキの足元から木の根のようなものが飛び出してきて、ユキの身体を拘束した。さらに葉のようなものがユキの目を覆う。 「悪いが、事情がわかるまで拘束させてもらう」 「ああ、カイラ様が拘束プレイがお好きだと思い違いをした時もありましたね。懐かしい」 ユキは一切動揺していないのを見て、カイラはかゾッとした。
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