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 新都心に戻った二人は、オフィス街の裏通りを歩いていた。  歩きながら翔太と話すうちに、頭の中にちりばめられた情報が整理され気分が落ち着いていった。  少なくとも4人の超能力者がほぼ同時に力を発現したこと。  それはつまり他の能力者の存在を示唆(しさ)していた。  そして政府の機関が没と呼び、事実を隠蔽(いんぺい)して闇に葬り去ろうとして一カ所に集めたこと。  自分たちは人類にとって、危険な邪魔者だと判断されたのだ。  これから追手と戦いながら他の仲間を探す方針に決まった。  収容所では定期的に食事を与えられていたが、外に出てみると衣食住にも事欠く有様で、2人の顔に疲弊(ひへい)の色が(にじ)んでいた。 「よお、そこの嬢ちゃんたち」  路地に立った中年の男が声をかけてきた。  翔太はあかりの前で仁王立ちになり、両手を前に突き出した。  警戒の色を見せた2人に背を向けた男は、飲食店へと入っていった。 「腹減ってるんだろう。  来なよ」  顔だけ中途半端に振り向いて言った。  カウンター席と、テーブル席が2つあるだけの小さな店の中に客はいなかった。  一番奥のテーブル席に座ると、コップ一杯の水をコトンと音を立てて2つ置いた。  久しぶりに口に入れる物を置かれたので、片手で鷲掴(わしづか)みにして持つと一気に(のど)へ流し込んだ。  洋食風のカツカレーが目の前に置かれると、こちらも(むさぼ)るようにスプーンですくい口に運ぶ。 「良い食いっぷりだねえ。  良かったら上で泊まって行きなよ。  夜は物騒だから、事件でも起きたらいけない」  言葉を残して、男は厨房(ちゅうぼう)へと消えた。  翔太は自分たちが没と呼ばれる超能力者であること。  政府の機関に捉えられ、収容所に入れられていたことを包み隠さずに話した。  指原 国彦(さしはら くにひこ)と名乗った男は、ウンウンと首を縦に振りながら話を聞いて、 「そうかい、疲れたろう。  貧乏食堂だが、雨風はしのげる。  ゆっくりして行きな」  と言ったきり、また仕込みの続きを始めた。
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