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「勝、これではとても持ちこたえられないぞ」  雨あられと弾丸やレーザービームを受けた(たて)は、(くだ)けては再生し、また砕かれては新しい盾を生成していった。 「ワシの体力が持たん」 「すみません、慎ジイさん。  私が加減を間違えたばっかりに ───」  攻撃を超能力で察知して、記憶を書き換える勝の処理スピードが、敵の数に押されていた。 「とても(さば)ききれない ───」  時が経つごとに敵の数が増え、弾薬を補給しているようだ。  万事休す ───  その時、 「オラオラオラアッ」  上空から降ってきた少年が、敵に向かって投げた衝撃波で弾とレーザーが軌道を変え、遥か後方のビルをなぎ倒した。 「こっちです。  敵意を持っているのは正面の相手だけです。  まだ逃げられます」  この少年と少女は ───  慎ジイは一瞬合掌(がっしょう)し、ありったけの力を込めて巨大な門を地面から引きずり出した。 「万物の理よ、我が意に応えよ。  我が手は、万物を生み出す坩堝(るつぼ) ───  想像は創造、今、具現化する。  出でよ、羅生門」  あかりを捉えたレーザーが、「既(すんで)の所で弾き返された。 「さあ、こっちです」  国彦が路地の向こうから叫んだ。 「まさか、もう使うことになるとは思いませんでしたよ」  自動操縦の軍用ヘリに乗り込んだ5人の超能力者は、それぞれの思いを胸に安堵(あんど)した。 「これから、どこへ ───」  まだ息が上がっている慎ジイが尋ねた。 「伊豆沖の離島に、我々を支援する団体が基地を建造しています。  本当は、もう少し時が熟してから集結する手筈(てはず)だったのですが ───」  国彦の困惑した声に、勝は肩をすぼめて(うつむ)いた。 「まあまあ、国さん。  あまり(いじ)めないでやってよ。  責任感が強いお兄さんなんだからさ。  俺は、派手にドンパチやって、胸がすく思いだぜ」  自分の拳で胸をドンと叩き、翔太が立ち上がる。  傍らで大きなため息をついて、あかりが言った。 「ドンパチも良いけどね、他人事じゃあないのよ。  私たちは、協調路線で歩み寄らない限り、明日はないの」 「まったく、面目ない」  慎ジイと勝は、ますます肩身を狭くしたのだった。  そして、誰からともなく笑いが起こった。  その渦は、沈みゆく夕日に照らされて、暖かく辺りにこだまするのだった。 了 この物語はフィクションです
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