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9
「勝、これではとても持ちこたえられないぞ」
雨あられと弾丸やレーザービームを受けた盾は、砕けては再生し、また砕かれては新しい盾を生成していった。
「ワシの体力が持たん」
「すみません、慎ジイさん。
私が加減を間違えたばっかりに ───」
攻撃を超能力で察知して、記憶を書き換える勝の処理スピードが、敵の数に押されていた。
「とても捌ききれない ───」
時が経つごとに敵の数が増え、弾薬を補給しているようだ。
万事休す ───
その時、
「オラオラオラアッ」
上空から降ってきた少年が、敵に向かって投げた衝撃波で弾とレーザーが軌道を変え、遥か後方のビルをなぎ倒した。
「こっちです。
敵意を持っているのは正面の相手だけです。
まだ逃げられます」
この少年と少女は ───
慎ジイは一瞬合掌し、ありったけの力を込めて巨大な門を地面から引きずり出した。
「万物の理よ、我が意に応えよ。
我が手は、万物を生み出す坩堝 ───
想像は創造、今、具現化する。
出でよ、羅生門」
あかりを捉えたレーザーが、「既の所で弾き返された。
「さあ、こっちです」
国彦が路地の向こうから叫んだ。
「まさか、もう使うことになるとは思いませんでしたよ」
自動操縦の軍用ヘリに乗り込んだ5人の超能力者は、それぞれの思いを胸に安堵した。
「これから、どこへ ───」
まだ息が上がっている慎ジイが尋ねた。
「伊豆沖の離島に、我々を支援する団体が基地を建造しています。
本当は、もう少し時が熟してから集結する手筈だったのですが ───」
国彦の困惑した声に、勝は肩をすぼめて俯いた。
「まあまあ、国さん。
あまり虐めないでやってよ。
責任感が強いお兄さんなんだからさ。
俺は、派手にドンパチやって、胸がすく思いだぜ」
自分の拳で胸をドンと叩き、翔太が立ち上がる。
傍らで大きなため息をついて、あかりが言った。
「ドンパチも良いけどね、他人事じゃあないのよ。
私たちは、協調路線で歩み寄らない限り、明日はないの」
「まったく、面目ない」
慎ジイと勝は、ますます肩身を狭くしたのだった。
そして、誰からともなく笑いが起こった。
その渦は、沈みゆく夕日に照らされて、暖かく辺りにこだまするのだった。
了
この物語はフィクションです
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