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 あかりが目覚めた部屋は、雑居房のように狭くて窓がほとんどなく、外の様子がわからなかった。  皆外で突然捕まえられて連れて来られたそうだ。 「この腕輪と足輪、首の輪に超能力を押さえる力があるようじゃ」  老人がベッドに腰かけてこちらを見た。  看守がパンとスープを大量に運んで来ると、あかりはあっという間に平らげ、顔色が随分良くなっていた。  由梨と一緒に学校から帰る途中に、今までに感じたことがないほどの頭痛に襲われて意識を失った。  それからの記憶がなかった。  だが仲間たちと話すうちに、少しずつ明るい気持ちを取り戻していた。  老人は田宮 慎二(たみや しんじ)といい「慎ジイ」と呼ばれていた。 「ところでな」  声を潜めた慎ジイは、目を据えて真っ直ぐにあかりの目を見て言った。 「我々は『(ぼつ)』と呼ばれ、人間とは違う生物として、これからどう扱うか政府が検討しているようじゃ。  場合によっては殺されるかもしれん」 「そんな、なぜですか。  私は何もしていません」  思わず声が高くなった あかりをたしなめるように、人差し指を口に当てて続けた。 「当たり前じゃ。  これはワシの推測だが、人間には異分子を排除しようとする性質がある。  歴史がそれを証明しているのじゃ」 「だから、俺たちと力を合わせてここから出よう」  桐谷 翔太(きりたに しょうた)は、高校で喧嘩(けんか)をしたとき、派手に教室を壊して通報されて捕まったそうである。  怒りに任せて力を解放したら、歯止めがきかなくなったと言っていた。  年齢が近いせいか、あかりとは話が合った。 「私は慎ジイと一緒に情報を集めようと思う」  落ち着きがあって頼りになる槇田 勝(まきた すぐれ)は、最強の能力を持つと、慎ジイが言っていた。  確かに、分からないことが多すぎた。  自分の能力にしても、時々人の心の声が脳に直接響くように聞こえるくらいで、使い方も分かっていなかった。
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