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7
「国さん、今何て ───」
頭を掻いて、国彦が翔太の強い視線を真正面から受け止めた。
「俺も、君たちと同じ超能力者なのだよ」
一瞬、金属をこすり合わせるような不快な音が鼓膜を揺らした。
そして国彦がいた空間に、向こう側の風景が現れた。
消えた、という感覚よりも自分の認知能力がおかしくなったようだった。
10分ほど経つと、背中側に気配が戻ってきた。
「ほら、ピザ一丁。
お客さん、焼き立てが一番ですぜ」
皿に開けて切り取ると、あかりがやってきて貪り食い始めた。
頬に一杯詰め込んで、幸せそうな顔で食べる彼女を、微笑ながら国彦は見つめていた。
「旨そうに食うねえ。
お嬢さんを見てると、高校生のときに亡くした妹を思い出すよ」
急にしんみりした空気になり、翔太はピザに伸ばした手を止めた。
無言で見返す視線に耐えかねたのか、国彦の方が口を開いた。
「山で雪崩に遭ってね。
そのとき、テレポーテーションできたら難なく救えたはずだが ───」
語尾には悔しさが滲み、これ以上言葉を継げなくなっていた。
相変わらずパクパクと食べ続けるあかりを見て、
「そうか、お前はテレパシーで知っていたのか」
「お前って呼んだね。
あんたの彼女じゃないし」
堅い言葉を返すと、国彦は笑い出した。
その時、戸の向こうで大勢の靴音が響いた。
「何か来るぞ。
おっさん、あかり、裏口から逃げよう」
「逃げる必要はないさ」
飛び出そうとする翔太に腕を伸ばして制した国彦はひときわ大きな気合いをかけ、金属音を残して消えた。
次の瞬間、大量の銃を抱えて2人の背後に現れた。
「ほれ、好きなだけ武器を取れ。
俺は政府にマークされているが、捕らえられないからこうして飯屋に閉じこもっていてやってるのさ」
落ち着き払った あかりに視線を移した翔太は軽く舌打ちをした。
「嫌味な能力持ってるねえ、あんたたちは。
知らなかったのは俺だけかい」
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