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「くっ、やぁっ……! もうやだあ……!」  切なげに鳴きながら、倫はオフィスチェアの上で身を捩った。  スカートからタイツ、下着まで、あっさり剥ぎ取られてしまった。膝の裏を椅子の肘掛けに乗せ、陰部を見せつけるように大きく足を開いている。  ――もちろん彼女自身が望んで、このようなあられもない格好をしているわけではない。  無理やり、やらされているのだ。  つい先ほどまでパーティーの主役を務め、社員からの賛辞を一身に浴びていた若きリーダー。――日比野 晴馬によって。  縛られた、いや自分が縛りつけた倫の前に晴馬は跪き、剥き出しの女性器に口をつけた。ちゅるっと音を立て、盃でも飲み干すかのように啜る。 「ふふ。美味し……」 「おねが……い……! もう、やめて……っ! おかしくな、る……!」  息も絶え絶えに訴える倫の背では手錠が、「ピンクでもこもこ」という可愛らしい見た目とは真逆に、非道な役目を果たしている。倫がどれだけ暴れようと決して許さず、その細い手首を戒めているのだった。  あとからあとから湧き出る愛液を吸い上げ、口の周りをべたべたと汚すそれを長い舌で舐め取って、晴馬は笑った。 「そんなにガチャガチャ抵抗すると、手に傷がついちゃいますよ? なるべく痛くなさそうなの、選んだんですけどねえ」  言いながら、破裂しそうなほど膨らんだ倫のクリトリスを、晴馬はちょんちょんと指でつついた。 「……っ! さわらないで!」 「敏感になり過ぎてるんですね。高園さんのここ、真っ赤で、すごく可愛いですよ。――もっとイキたい?」 「やだ……っ」  倫は必死に首を振った。これ以上攻められたら、どうにかなってしまいそうだ。  もう何度も何度もいたぶられた。シャツの前ははだけ、ブラジャーはズリ下げられて。散々指で捏ねられ、吸われたせいで、唾液に塗れた倫の乳首は、痛々しく赤く光っている。  指と舌による度重なる凌辱を受けて、股の中心の肉芽もすっかり育ってしまった。  もう何度イッただろう――。尻の下が冷たい。汗と、だらしなく垂れ流した蜜液が、オフィスチェアの座面をぐっしょり濡らしているのだ。  いつも仕事をしているところで、なんという姿をして、なんといういやらしいことをしているのだろう。  ――そもそも、どうしてこんなことになった?  分からない。晴馬はただの同僚で、仲間で、このような卑劣なことをする男には決して見えなかったのに――。  ぐずぐずに濡れそぼった倫の秘洞に、晴馬の指が入り込む。 「ひっ……!」 「ああ、こんなに柔らかくなって。たまらないな……」 「あっ、ぅあ……! 動か、さない……でぇ……!」  膣内に入り込んだ男の指が交互に動く。人差し指と中指。太くて長いそれは、雌の壁の凹凸をネコの顎を愛撫するかのように、優しく優しく撫でた。 「あっ、あっ……!」  内側を指で押されるたび、倫はビクビクと跳ねた。過度に感じやすくなっている体は、男にほんのひと撫でされるだけで達してしまう。 「際限なしですね。よっぽど溜まってたんだ? それでもしょーもない男に引っかかることなく、貞節を守ってエライぞう」 「ば、バカにしてるの……!」  もうずっと彼氏がいないことは、普段の雑談における自虐ネタのひとつだった。  自分には魅力がない。だから晴馬はそのようにからかっているのだろう。  だが自分で言うのは良くても、人に言われるのは腹が立つものだ。  抗議するつもりで下を向けば、開いた足の間から整った晴馬の顔が覗く。  自分のいやらしいところの近くに――彼が。目と目が合い、余計恥ずかくなって、倫はカーッと頬を赤く染めた。 「でも……。ねえ、足りないでしょう? あなたは、結構淫乱だからね」  知ったようなことを言って、晴馬はくくっと喉の奥で笑った。 「そ、そんなこと、ない……っ!」 「でもほら、きゅうきゅうって……。あなたのここ、俺の指を離してくれませんけど」 「くっ……!」  晴馬の麗しい声に優しくいたぶられていると、去ったばかりの熱がまた蘇ってくる。  ――足りない。  大人の女として成熟している倫は、撒き餌のように数々与えられた軽い絶頂では満足できない。  もっと深く、濃く、味わいたい。  雌の器官で雄の器官を咥えて、思う存分、咀嚼したい――。 「どうします?」 「あっ……!」  膣に潜り込んだままの晴馬の指が、ぐるりと円を描いた。  倫は口を開くが、なかなか声が出ない。  言えない。恥ずかしい。みっともない……。  ――だけど。 「欲し、い……」  悩み、迷い、倫はようやく答える。  晴馬はますます楽しそうに、唇の端を上げた。そして立ち上がると、倫を座らせているチェアの下部から突き出ていた取っ手を押した。 「きゃっ!」  がくんと椅子が揺れたかと思うと、座面が急に高くなった。そのせいで倫の秘部に、背の高い晴馬の下腹部が丁度当たる。 「加圧式の椅子って便利だよね。いつかいやらしいことに使ってやろうって思ってて」 「そ、そんなこと考えてたの……!?」  いつもキリッと凛々しく、仕事に取り組んでいたように見えたのに。倫が呆れたように言うと、晴馬はいたずらっぽく笑いながら、スラックスのベルトに手をやった。 「男は仕事とスケベは別腹なんです。真面目な討論をしながら、頭ではあなたとのセックスを妄想していたりね」 「……!」  そんな人だとは思わなかった。だが晴馬を責める前に、倫の目は彼があらわにした下半身に釘づけになった。  筋肉の張った逞しい下肢の付け根では、赤黒い男根が高々と天を指して――。 「な、なにやって……! 見せないで、そんなの……っ!」  倫はさっと顔を逸らした。一瞬でも見惚れてしまった自分が恥ずかしい。  だけどこんな状況で――。  決定的な悦楽の沼には堕とさず、焦らすだけで。  内側がこんなにもじゅくじゅくと潤み、欲しくて欲しくてしょうがないこんなときに、あんなものを見せられたら。  ――硬そうだし、大きいし。ああ……! もうやだ!  淫らな欲望に取り憑かれた自分が嫌になって、倫はぎゅっと瞼を閉じた。  激しく脈打つ鼓動の音に、晴馬の声が重なる。 「高園さん、物欲しそうな顔してる。そうだよね、ずっと忙しかったもんね。オナニーだってしてる暇もなかったかな?」  晴馬は自分のそれを見せつけるようにゆるくしごきながら、倫の前に立った。 「いや……っ! 来ないで……!」 「もうなにもしません。――あなたが、あなたの中に招いてくれるまでは」 「……っ」  背後の手錠は、やっぱり解けない。逃げられない。  どうにかしなければ。  この状態が続けば、狂ってしまう――。  なにかを求めて、倫の口がぱくぱくと動く。  よく分からない。なんで、どうして、こうなった?  しかし崖っぷちに立っているのは確かだ。  晴馬はもう倫にさわってもいないし、舐めてもいない。だが彼の声と姿と仕草が、倫を追い詰める。  ――欲しい、欲しい、欲しい……!  晴馬の手の中で、重たそうに揺れているあの肉の棒で、奥まで貫いて欲しい。  首を絞められた女が酸素を求めるように、倫は苦しそうに喘ぎながら言った。 「おねが……い。お願い、日比野くん……。それ、を……」 「はい? どうしましょうか?」  晴馬は椅子の上で足を開かされたままの倫の前に立つと、性器同士をすり合わせた。座面の高さはやはり丁度良く、晴馬が立ったままで陰唇とペニスが重なる。 「うわあ、すごい音。ほら、聞こえるでしょ? びしょびしょですねえ」 「やあっ……!」  晴馬が腰を前後させると、下の口からこぼれたよだれと彼自身が絡まり合い、ぐちゃぐちゃと卑猥な水音を立てる。 「あっ、ああ……っ!」  晴馬の長いペニスは、倫の縦の溝にぴったりと沿い、端から端まで隙なく擦り上げた。  大きな亀頭が、勃起したクリトリスを優しく抉る。 「いれ……て……」  張り詰めた肉茎から伝わってきた晴馬の熱が、倫に残っていた最後の理性を砕いた。 「ん? 聞こえないんですけど。高園さんがいやらしい音をさせるから」 「うっ……!」  狡くて憎くて恨めしい。どうしてこんなことをするの。  諸々文句を言いたいが、晴馬に押しつけられた快感が、倫の脳みそをドス黒く塗り潰していく。 「入れて……! 欲しいのっ、お願い! 日比野くんの、い、入れて……!」 「んー? 指示は正確に、具体的にお願いします」 「……う」  悔しそうに唇を噛む倫に対し、晴馬は余裕綽々に命令した。 「『おちんちん入れてください。犯してください。私はあなたとセックスしたいです』。はい、どうぞ」  ――もう、ヤケだった。 「おちんちん入れてくださいっ! 犯してくださいっ! 私はあなたとセックスしたいです!」 「はははっ! 本当に言った!」  ゲラゲラ笑い出す晴馬を前に、倫はとうとう泣き出してしまった。 「もうやだぁ……! なんでこんな意地悪するの!? ひどいよ!」  こんな人だとは思わなかった。賢くて優しい、素敵な後輩だと思っていたのに。  ――好きだったのに……! 「あーあ、泣いちゃった。でも、しょうがないですね。これは復讐だから。少しは苦しんでもらわないと」  涙に濡れた倫の頬に、晴馬は手を置く。すっと細くなった彼の目には、複雑な光が宿っていた。
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