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プロローグ
極端と半端なら、俺は半端を選ぶ。
俺の家庭は極端にやられて腐り落ちた。そして、俺の友人も形通りの花を咲かすことが出来ず、地に落ちた。
真っ青な青天井に頭を押しつぶされそうになりながら、綺麗な石面調のタイルに唾を吐いた。遠くで子どもの甲高い声がする。そして、すぐに母親や父親が駆け寄ってくる。その様は予定調和のようで、儚く美しく、とても残酷で見るに堪えなかった。
被ったキャップを目深にする。
最近オープンした大型ショッピングモールの入り口には、緑の芝が均一に整えられている。段々と高くなる日差しから来訪客を守るように、樹木が植えられていた。その影の下にあるベンチに座りながら、俺は振り返る。
樹木の根元には、景観の邪魔にならないよう雑草防止の素材で出来た模擬の土が施されている。
周りを見渡す。
ここは、ベッドタウンに苦節九年で出来上がったショッピングモールだ。構想から着工まで八年かかり、去年の六月からとっかかって今年の六月初旬には出来上がった出来立てほやほやのショッピングモール。なにせ、俺もその末端として関わったのだからよく知っているのだ。
ため息が空に吸い込まれる。
この整った空間に、俺の友人は埋められて死んだ。
親子の声が遠くなっていく。ああ、彼らに急な用事が出来たら良いのに。そうしたら、少しでも罪悪感が和らぐ。
俺はベンチの横にあるリュックサックを、丁寧に抱え込むようにしょい込んだ。
今日、六月第三日曜日のいま、大勢の人が死ぬ。俺が殺す。
亡くなった友人の手向けに、幸せな来訪者をあの世に連れていく。
俺は、肺の空気を焦燥と共に吐き出した。
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