夜のゲーム

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 しばらく3人で素材を集めていると、真田くんがゲームにログインした。片桐くんがグループ通話に招待すると、こんばんは、と真田くんの落ち着いた声が聞こえた。 「こんばんは」 『こんばんは』 『俊成ウケる!』  僕と文哉が挨拶をすると、片桐くんがプギャーの顔文字が似合いそうな声で続く。 『何で俺は穂高に煽られてんの?』 『大竹くんが俺を褒めたら拗ねちゃったんだろ?』 『え? ……言ったのか?』  相談したことをバラされた。真田くんの声が低くなって身構える。何で言っちゃうんだよ、片桐くん。 『ほら、怖いって。大竹くんが気にしてたから怒ってるわけじゃないよってフォローしてやったのに、説得力ないじゃん!』 『あっ、悪い。怒ってはない。そんなに気にされてると思わなくて、言い方キツくてごめん』  真田くんに謝られてしまった。 「それならいいんだけど、嫌なことあったら言ってね」 『大竹くんは気にしなくていいの! 俊成の器が小さいだけだから、俺と違って』 『は? 山田くん、ちょっと俺のこと褒めてくんない?』 『あっ? 潰されてーのか?』 『器小さいじゃん』  文哉が言葉を挟む暇を与えず、片桐くんがドスの効いた声を出して真田くんが苦笑する。  楽しい雰囲気になって、そこからは素材集めに集中した。真田くんはレベルを上げたばかりだからイベント限定エリアに戸惑っていた。今まで真田くんがいたエリアよりは敵が強い。でも立ち回りが上手いから、あまりやられないのはすごいな。僕は剣士で盾を持っているからガードしちゃうけど、回避しろって言われたら真田くんのようにはできないと思う。 『コラボカフェ楽しかったね。また行きたいくらい』  文哉が昨日のことを思い出して声を弾ませる。 「僕も終わるまでには行きたいな」 『また一緒に行く?』 「ううん、次は片桐くんと2人で行きなよ」  昨日は予約が被ったから一緒に行ったのであって、本当ならデートをするはずだったんだ。また一緒に行くほど無粋ではない。  文哉が誘えないってなると、1人で行くことになるのかな? SNSで一緒に行ってくれる人を探すのは僕には敷居が高い。 『俊成もコラボカフェ楽しかったか?』 『ああ、作りが良かったよな。料理も美味かったし』 『また行きたいか?』 『うーん、どうだろう』 『アホか! 何ですぐに行きたいって言わねーんだよ。こんな簡単なパスを見逃すなんて……。俺が司令塔だったら、お前みたいなフォワードにはもうパス出さねー』  片桐くんが嘆いて、真田くんが『あー……』と悲しげな声を漏らした。 『えっと、……そういうことなの?』 『うん、そういうこと』  文哉が聞くと片桐くんが力強く答えた。そういうことってどういうこと? 僕は首を捻るばかり。  明日も学校だから、あまり遅くならないうちに解散になり、その後僕はイベント装備の胴体を作った。試着してみるとやっぱりカッコよかった!
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