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体育倉庫
時間がある時は4人でパーティを組んでゲームをすることが増えた。真田くんと片桐くんと仲良くなれた気がする。
学校では真田くんと話していると周りに、何であいつが? みたいな顔をされるけど、ゲーム以外のことでも真田くんは気さくに話かけてくれて嬉しい。
6時間目は体育でバレーボールをした。授業が終わってボールやネットを片付ける。物がいっぱいだから奥にいて入り口から死角になっていたのか、僕と真田くんに気付かずに扉が閉まった。かんぬきがかかる音が微かに聞こえた。
「まじか……」
「僕たち閉じ込められたの?」
扉を叩いても外からは無反応。
小さな窓から差す陽の光で真っ暗闇は免れている。カビ臭くて埃っぽくて気分が沈む。
「座ろうぜ。HRはサボることになると思うけど、それが終わったら部活の奴らが開けてくれるだろ」
マットの上に腰を下ろす真田くんが隣のスペースをポンポンとした。そうだね、と僕は真田くんの隣に座る。
1人だったらオロオロとパニックになっていたかもしれないけど、真田くんがいるから落ち着けた。少し待てば出られると安心もさせてくれたし。
マットは畳まれているから狭くて肩が触れる。服越しでも真田くんの体温が感じられた。どうしてか分からないけど顔が熱くなって、触れた肩を反対の手で押さえた。
「どうした? 寒い? 汗かいたもんな」
寒くて身体を抱いたように見えたみたいだけど、僕は汗をかくほどバレーボールをしていないから寒くなんてない。どう説明しようか、と考えあぐねいていると、真田くんがジャージを脱いで僕の肩に掛けてくれる。
「あっ、僕は大丈夫だよ。寒くないから真田くんが着て」
「俺は暑いから祐樹が着てよ。汗臭くて嫌だってなら返して」
「いや、汗臭くなんてないよ」
首と両手を振る。返すことが出来なくなった。
……ちょっと待って。真田くんに初めて名前を呼んでもらった。目を丸くしていると、どうした? と目を細められて顔が熱くなる。視線を外して何かないかと辺りを見渡した。ハーフパンツのポケットにあるスマホを思い出す。ムズムズする雰囲気を払拭したくて真田くんの前に差し出す。
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