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僕の部屋に入って荷物を片隅に置くとクッションの上に座ってもらって、僕は目の前に腰を下ろす。立っている時よりは目線が近い。ジッと見つめると、表情を強張らせて視線を外される。
拳を握って真田くんの胸に当てた。肩を跳ねさせて、僕の手と顔で視線を行ったり来たりさせている。
「昨日のこと、勝手に片桐くんと文哉に話しちゃってごめんね」
「穂高に話したの?」
目を瞬かせる真田くんに向かって頷けば、気まずそう天井を仰ぐ。
「僕は友達でいたいと思ったんだ」
「そうか……」
「でも、ずっとモヤモヤが治らなくて、友達じゃない方がいいのかもって思い始めた。片桐くんに殴ってでも言わせないとって言われたからさっき叩いた。これは謝らないよ」
「叩いたって、手が触れただけだったけど」
だって人なんて殴れないもん。
沈黙が続く。僕は真田くんが言ってくれるまで待つ。真田くんは口を開いては閉じてを繰り返した。覚悟を決めたようで、両頬を叩くと手を握られた。
「祐樹が好き。付き合って欲しい」
スッと胸の中にこもっていたモヤモヤが霧散した。好かれていると知って嫌じゃないと思った時点で、僕も同じ気持ちだったのだろう。ハッキリ言われて気付けた。手を握り返す。
「よろしくお願いします」
目を大きく見開いて真田くんが固まった。目の前で手を振ると我に返ったようで、その手も掴まれて両手が繋がる。
「本当に? 夢じゃない?」
前のめりになって聞かれ、何度も頷いた。
2人して肩の力を抜いて、ホッと息を吐く。顔を見合わせて笑った。
「スッキリしたしホッとした」
「俺も」
「じゃあゲームしよ」
「ゲーム? イチャつくんじゃなくて?」
「イチャつくってどうするの?」
「えっと……ハグとか?」
それはまだ僕には早い。
「もう少し心の準備させて。今日でイベント終わっちゃうのに、あと少し素材が足りないから手伝って欲しいな」
目を細めて頭をポンポンされた。
「分かった。装備、完成させような」
向かい合って座っていたけど、隣にぴったり引っ付くように真田くんが座り直す。スマホを横向きにして両手で持つと、僕の腕に真田くんの腕が絡み、真田くんもスマホを横向きに持った。肘の内側同士がくっつく。
「……これだと操作しにくいな」
「そうだね」
くすくすと笑い合って、でも腕はほどかない。
ドキドキと鼓動は嬉しく跳ねる。真田くんとの関係をゆっくり進めていけたら幸せだろうなと思った。
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