31人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「ってか、あいつ遅いな」
文哉とひとしきり見つめあった後、片桐くんがスマホで時間を確認してボヤく。
そういえばもう1人来るんだった。
片桐くんはスマホを耳に当てるとすぐに話しだす。
「今どこ? 予約の時間があるから、遅刻されると困るんだけど」
相槌を打って辺りを見渡すと、相手を見つけたのか手を上げた。
「俊成、こっちこっち」
友達は俊成くんか。そちらに目を向けると、悪い、と言いながらサラサラの髪を揺らして駆けてくる。切れ長の目に薄い唇とシャープなフェイスラインの塩顔イケメン。同じクラスの真田俊成くんだった。
「遅かったな」
「時間ぴったりだろ。それよりその頭どうしたんだ? 鬱陶しいくらい長かったのに」
「イメチェン! 俺ってば何でも似合うから。こいつは真田俊成。初心者だけど仲良くしてね」
片桐くんに紹介されて、どうも、と真田くんは頭を下げた。
文哉が自己紹介するから僕もつられて名乗る。でも、同じクラスだし名乗る必要なかったなと思った。
「よろしく」
そう口の端を広げて笑う真田くんを見て、僕のこと知らないのではないかと気付く。
学校内でヒエラルキーの頂点に立っているような真田くんが、底辺の僕を認識していると思った自分がおこがましくて顔が熱くなった。
クラスではいつも派手な人たちに囲まれて話をしていて、ゲームをするイメージなんてなかった。真田くんの意外な一面が知れて、近寄りがたい印象が少し和らいだ。
最初のコメントを投稿しよう!