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店を出ると一気に現実に引き戻される。他のメニューも気になるし、ランダムコースターも欲しい。こういうのってコンプしたくなるのはオタクのさがなのかな。コンプしたくても、期間中にもう一回これたらいい方だ。コラボカフェは高校生が頻繁に行けるような料金設定じゃないから。
カフェに移動して4人でゲームをした。ゲーム内で待ち合わせをする酒場はやはり先ほどまでいた空間そのもの。
始めたばかりと言っていた真田くんは武器は少し鍛えていたけど、防具は初期装備だった。
でも動きは本当に初心者? と聞きたくなるような動きだった。手数で攻める双剣士だけど、回避しながら攻めるのが上手過ぎる。
「真田くんはゲームをよくやるの?」
「いや、小学生くらいまではテレビゲームもやってたけど、最近は全然やってなかった。ソシャゲは初めて」
普段ゲームをしないのに上手いことにも驚いたし、何でこのゲームをやろうと思ったんだろ。
真田くんの強化素材を集めつつ、イベントに参加できるレベルまで上げたところでおひらきになった。あまり長居しても迷惑になるだろうし。
片桐くんと真田くんと別れ、途中まで文哉と一緒に帰る。
「楽しかったね」
「うん、真田くんもいい人でよかった」
「そうだね。あのさ、真田くんは僕のクラスメイトなんだよね」
文哉は目をパチクリする。
「そうなの? 初めましてみたいな感じで自己紹介してたけど」
「真田くんが僕みたいなオタクを認識してると思えなくて。だから『同じクラスだよね』って言ってやっぱり知らないってなったら微妙な空気になるじゃん」
「じゃあ明日からは話しかけられるよね。一緒に遊んだんだから」
「うーん、どうだろう」
真田くんとは仲良くしたい。同じ学校でこのゲームにハマっている人を知らないから。でも、真田くんと僕みたいなオタクが話していたら妬まれるんじゃないかって不安がある。文哉には片桐くんがいたけど、僕には前髪を切られて助けてくれるような人はいない。今まで通りひっそりとした高校生活を送ろう。
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