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次の日の学校
チャイムの鳴る10分前に教室に着き、自分の席に座ってスクールバッグの中身を机の中にしまっていると、誰かが僕の前の席に座って机に腕を置いた。目線を上げると真田くんだった。
「おはよ」
びっくりしすぎて何も返さずに目を瞬かせるだけ。もう一度、おはよ、と挨拶されて慌てて頭を下げた。
「真田くんおはようございます」
「何で敬語? 昨日は普通だったじゃん」
あれ? 僕のこと知ってたの?
「真田くんは昨日会った時、僕がクラスメイトって知ってたの?」
「当たり前だろ」
「そうなんだ。僕は真田くんが僕のこと知らないと思ったから」
「だから自己紹介したの?」
それは文哉につられただけだけど。
「それでさ、嫌じゃなかったらフレンド登録してよ。どうやるの?」
ゲーム画面を見せられる。昨日一緒にパーティを組んだから、遊んだプレイヤーの履歴から僕のIDをタップしてフレンド申請を送った。
僕は自分のスマホを操作して、フレンド申請を許可する。
「これでフレンドになれたよ」
「ああ、ありがとう」
そこで周りの視線に気付く。人気者の真田くんとオタクの僕が話をしていると目立つ。派手な美人グループには睨まれているような気もする。慌てて両手で前髪を押さえた。
「何してんの?」
「えっと、前髪を切られたくないなって」
「長くないから切らなくていいだろ」
真田くんは首を捻る。片桐くんは真田くんに髪を切った理由をイメチェンと言っていた。本当のことを言えば、文哉が嫌がらせをされていたと言わなければいけない。初対面でそんな印象を植え付けないように配慮してくれたんだろうな。
片桐くんって優しくてかっこよくて話しやすくてスパダリってやつなんじゃないだろうか。いい人と付き合えてよかったね、文哉。
「何考えてんの?」
自分の世界に入り込んでしまった僕を真田くんの言葉が現実に引き戻す。
「えっと、片桐くんってすごくカッコいいよね。憧れちゃうなって」
「は? 全然カッコよくねーし」
少し不機嫌になってしまった。友達を褒められたら嬉しくないのかな? 僕は文哉が褒められたら嬉しいけど。すぐにチャイムが鳴り、真田くんが自分の席に着いたから理由は聞けなかった。
朝に話しかけられたから身構えていたけど、それ以降真田くんに話しかけられることはなかった。やっぱり僕が何か怒らせるようなことを言っちゃったのかな? 朝の会話を思い返しても、全く身に覚えがないけど。
放課後になり、謝ろうと思ったけど真田くんの周りには友達が集まっていたから話しかけにくい。明日にしようと諦めて帰宅する。
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