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「うん。でも、やるしかない。いま、もっている条件で、最善を尽くさないといけないんだ。幸運なことに、チャーチル少将もできる限りの協力は約束してくれた。あとは、できることを最大限考えるしかないね」
フランツ様の顔からは悲壮な覚悟が見える。
「ニーナ、できる限りのことをしよう。協力してくれるね?」
「もちろんです」
そして、あの軍議から3日後。
ついに、事態が動いたわ。
「国境付近より速報です! 魔獣数体がついに出現したようです。現在、辺境伯軍第2師団に所属する小隊が、遅延戦闘を展開中。至急、増援を求むそうです」
伝令は、大声でそう告げた。いくつかのポイントに、小隊を配備して、国境に異変がないかを監視していたの。仮に、魔獣が出現した場合は、無理せずに遅延戦術に努めて、足止めをして本隊の到着を待つこと。本隊到着後、数の力で確実に制圧するのが作戦。
「出陣だ!」
各所から大声が上がる。すぐに準備をして、軍は動き出した。
「それじゃあ、ニーナ。行ってくるよ。砦のことは任せたから」
フランツ様は、私に優しく言う。
さすがに、私が最前線にいくことは許可されなかった。
私は、医療班を率いて、けが人が出た時の治療の準備や戦いが長期化した場合の物資輸送の指揮を執ることになっているわ。あとは、砦で保護している避難民の対応も……
大事な役目だけど、大好きな人が戦場に行くのを見送らなくてはいけないことは不安でいっぱいになる。
でも、私が不安な顔をしてはいけない。彼に余計な心配をかけたくないから。
「ご武運を」
私は、力強く彼に告げた。精一杯の笑顔で……
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