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「すでに、ヴォルフスブルク側だけではどうしようもない状況です。ここは、こちらから救援を打診してはいかがでしょうか? 我が帝国の軍も合わせれば、魔獣たちを抑え込むのは、楽になるはずです。数的な有利を作って、数の力で魔獣をせん滅するのが、最善かと!」
たしかに、辺境伯領の兵力だけでは、足りないけど、今は帝都からの援軍もあるわ。大陸でもトップクラス軍事力を持つヴォルフスブルクとグレアが手を結べば、魔獣だって倒すことができるはず……
場の参加者たちも、納得した表情ね。これしかない。今のうちに魔獣問題を解決できれば、グレア帝国の領内での被害は食い止められる。このタイミングが最後のチャンスということ。
「いや、だめだ」
反対したのは、皇太子様だった。
「なぜですか、殿下?」
フランツ様は詰め寄る。
「まず、それでは仮想敵国のヴォルフスブルク帝国を利することになるからだ。将来の安全保障的に考えても、この魔獣問題で弱体化してもらったほうがいい。今の状況なら、陸軍に大ダメージを受けているからな。このまま静観し、越境してきた魔獣だけを倒すのが、最善だろう」
「しかし……それでは、グレア領内にも被害が出る可能性が……魔獣の増加を食い止めなければ、世界的な脅威にだって……」
「考えすぎだろ。今の状況なら、グレアは多少の被害で済むだろう。それなら、目をつぶればいい。ヴォルフスブルク帝国の弱体化の方がはるかに大きな利益になる」
「民を、切り捨てるのですか……」
「それは、しょせんは辺境を守る程度の卿の狭い視野の話だろう? 私は、大局を見ている」
「ですが……」
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