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「くどいぞ、フランツ辺境伯! 今回の司令官は、私だ。決定権は、お前にはない!」
皇太子様の絶叫が響いた。
結局、軍議の結果、皇太子様の意見が押し通されてしまった。
フランツ様とチャーチル少将は抵抗したんだけど、最終的な決定権は、司令官にあるから、無視されてしまった。
「どうして……」
会議が終わった後、私は絶望にしていた。
フランツ様とチャーチル閣下の意見は正しいはず。グレア帝国次世代の双璧が同じ意見なのに……
たしかに、皇太子様の意見も一理あるわ。でも、それは人の上に立つものが採用してはいけないやり方よ。本来は守るべき民を、逆に囮にするような卑劣な……
「包囲網の崩壊は逆に考えれば、事態の早期解決を意味する。魔獣の密度が減り、滞留場所に侵入しやすくなるからな。ヴォルフスブルク帝国もそういう考えだろう。わざわざ、貴重な兵力を使ってまで、一般人を守るほど、余裕はない」
会議の最後に言った皇太子様の冷たい言葉が、頭から離れないわ。
どうして……
どうして、そんなことを言うのよ。
なぜ、軍隊が存在しているのよ!
それは、民を守るためのはずよ。そもそもの軍隊の存在意義と、皇太子様の考えは逆になってしまっている。兵を守るために、一般市民を犠牲にするなんて……
フランツ様も無念そうだったな。当り前よね。彼は、領主としての責任感がとても強いもの……
今回の皇太子様の決定を受け入れられるはずがないわ。
こうなったら――
私も直談判してみるわ! 皇太子様の食事をしている場所に向かう。
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