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人払いをしてもらい、私は皇太子様とふたりきりで話をすることになった。
「なんだ、ニーナ。久しぶりに会ったのに随分とひどい顔をしているな。そんな顔をされても、食事がまずくなるだけだ。話がなければ、悪いが消えてくれ。お前の顔なんて見たくない」
はっきり言ってくれるわね。私もできれば、会いたくはなかったわよ。
「考え直してはくださいませんか?」
「くどいぞ」
「『軍は民を守るために存在する。皇族も貴族もそうだ。』それが皇帝陛下の教えではありませんか! 殿下がいまやろうとすることは、その教えとは真逆のことではありませんか。お考え直しください、殿下!」
「はっきり言ってやろう。そういうところが昔から気に入らなかったんだ!」
「えっ……」
「俺は、お前のそういう説教臭いところが大嫌いだ! お前はいつも俺に対して上から目線だったよな!? お前の方が優秀だから……フランツ辺境伯の方が優秀だから……俺はいつもそう言われ続けていた。もう、うんざりなんだよ!! だから、お前たちの提案は、聞かない。聞きたくもない!」
これが、皇太子の立場にある人間の言葉なの……私は絶句する。
「あなたは、自分の責任を理解しているんですか?」
思わず言葉にしてしまった。臣下としては、絶対に言ってはいけない言葉……
「ここに誰かいれば、間違いなく不敬罪だ。一度は、聞かなかったことにしてやる。俺の気が変わる前に、ここから消えろ。今すぐに!!」
彼は、再び私を拒絶した。
もう、私達の和解は永遠にないのね。
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