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「私たちの関係は、今、完全に終わりました。長い間、ありがとうございました」
私ははっきりと言ったわ。彼とは完全に決別した。
「何を偉そうにしているんだ。女を戦場に連れてくる腰抜けのフランツがそんなにいいのか。ある意味、お似合いだよ、お前らは……」
もう、彼の言葉は聞こえなかった。私は無言で、部屋を後にした。
※
「ニーナ……」
部屋を出ると、フランツ様が待っていたわ。
「申し訳ございません。勝手なことをしてしまいました」
「いいや、謝ることはないよ。キミの意見の方が正しいと僕も信じているから。君は僕の意見を代弁してくれたんだ。感謝したいくらいだ」
さっきの絶望感は、彼に慰められると薄れていく。
「フランツ様が、皇太子様だったら……」
「ダメだよ、ニーナ。それ以上は言ってはいけない」
彼は悔しそうに、私をたしなめた。実力が及ばないことに気を病んでいる様子が伝わってくる。
フランツ様もこういう顔をするのね。
「この後は、どうするんですか?」
「殿下は、絶対に引き下がらないだろうね。皇帝陛下に直接、お伺い立てるのが一番だが、間に合わないかもしれないね」
皇帝陛下がここにいてくれたら、たぶん皇太子様は即座に更迭されるはず。でも、包囲網は崩壊寸前だし……間に合わない可能性のほうが高いわね。
皇太子は、間違いなく私たちのやり方を邪魔するはず。使者が皇帝陛下に会うことができないかもしれない。
「しょうがないね。リスクはあるが、水際で魔獣の侵攻を食い止めるしかない」
「とても難しいことになりますね」
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