辺境伯兄妹

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 ここで見栄(みえ)を張らないと、一生後悔するかもしれないから、ね。 「ありがとう。行ってくる」  私は、彼を見送った。  ※  後から聞いた報告によると、辺境伯領に侵入してきた魔獣は、3体だったそうよ。  最もよく見る熊型の魔獣3匹。  巨大な体躯(たいく)から繰り出される攻撃と巨体に似合わないスピードを持つ危険な魔獣よ。でも、力にだけ気をつければ、ある程度は簡単に対処できるはず。教科書には、そう書かれていた。  遠距離からの魔法攻撃で体力を削って、弱ったところを接近戦で仕留めるのがベスト。  学園で勉強した教科書の内容は、今でも思い出せる。フランツ様やチャーチル少将ならそんなことは暗記しているはず。  にもかからわず、今回の戦闘で出たのは、5人の死者と20人の重傷者、そして、100人の軽傷者。  数では圧倒的に有利で、優秀な指揮官と帝国軍屈指のエリート部隊が相手だったにもかかわらず……たった、3匹の魔獣を倒すだけで、こんなに大きな被害が発生してしまったの……  兵が砦に帰還したとき、一番最初に負傷者が病室に運び込まれたわ。  私と治癒(ちゆ)魔法が使える神官様や治療兵が手分けして、負傷者の手当てを担当した。  魔獣の爪で、引き裂かれた負傷者は、苦しそうにうめき声をあげていたわ。  ひとりの兵士が、病室に運び込まれて治療する間もなく亡くなった。  私は、その様子をただ然と見ていることしかできなかった。 「ニーナ様、ニーナ様! 気をしっかり持ってください!!」
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