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戦場となった村は、戦闘でボロボロになり、収穫間際の麦や家は焼けてしまったこと。住民の被害が出なかったのは、フランツ様がしっかり避難誘導をしていたからだ。それがなかったら、たぶんもっと被害は増えていたはず……
そう考えると、ゾッとするわ。
私は温かいスープを口に含む。優しい味。
「おいしい」
「よかった」
「今後はもっと厳しい戦いになるんでしょうね」
「うん、そうだね」
私たちは、短い会話を続ける。
たぶん、深い会話は必要なかった。
もう、お互いの気持ちは、十分伝わっているから。
「少しだけ甘えさせてください」
私は、素直に気持ちを伝える。生きるか死ぬのか戦場では、もう隠し事なんて通用しない。
「いいよ」
彼は、いつものように優しかった。
私は、スープの入った陶器をテーブルに置く。
そして、両手でゆっくりと、彼に抱きついたわ。お互いの体温を少しずつ共有する。彼の体は、とても大きく力強かった。
そして、魔獣の出現回数はどんどん増えていったわ。
1匹の時もあれば、複数匹の時もある。
最初は、数日おきだったけど、間隔も短くなっていった。
魔獣が増えれば増えるほど、けが人は多くなっていく。
私も、消耗しながら、なんとか負傷人の救護を続けたわ。フランツ様も毎回の出陣で大活躍していたけど、さすがに疲れてきていたわ。
いや、フランツ様だけじゃない。みんな疲れきっていた。
魔獣は、いつ出現するかもわからないから……
そして、最大の問題があるの。この砦の中で、最も疲れきっている皇太子様のことよ……
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