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大波乱の卒業パーティーを終えて、私は、オーラリア辺境伯領に謹慎蟄居を命じられた形となった。
お父様は、皇太子様に決闘を挑むと怒っていたが、フランツ様がなだめてくれた。
「親友の息子であるフランツ君にそう言われてしまったら、何も言えないな。今回は、大事な娘を助けてくれて本当にありがとう。どうか、どうかよろしくお願い致します」
「はい、ニーナさんは、私にとっても大事な後輩です。任せてください」
お父様は、フランツ様に涙を流して感謝していた。
私も、感謝しても感謝しきれない。
※
「ニーナ様、どうされましたか?」
「ごめんなさい。マリア。少し疲れたのかもしれないわ」
「そうですよね、いろんなことがありましたから」
辺境伯領に移動してから数日。私は、フランツ様の屋敷に部屋をあてがわれて、住まわせていただいている。
罪人のような形でここに来たのだから、家事でもなんでもするつもりだったが、「ニーナは大事なお客様ですからね、そんなことをさせてしまえば我が家の恥です」と言われてしまい何もすることがなくなってしまった。
なので、フランツ様の妹であるマリアとの午後のお茶会が唯一の楽しみだったりする。
マリアは16歳の学園1年生だ。私よりも2歳年下だが、やはり家族ぐるみの付き合いのせいで彼女のことは本当の妹のように思っている。
「私のお友達もみんな憤っておりましたわ。ニーナ様が、無実の罪で告発されて婚約破棄されるなんて……皇太子様も、あの浮気相手の男爵令嬢がそんなにいいのかしら?」
「ありがとう、マリア。でもね、あんまり大きな声でそんなことを言ってはダメよ。フランツ様にも迷惑になってしまうわ」
「気にしすぎですわ、ニーナ様。あの場では、みんな怖がっていましたが、お兄様がしっかり筋を通してくださったから、胸がスカッとしたと評判ですの。それに、私も大好きなニーナ様とひとつ屋根の下で暮らせるようになってとても嬉しいですわ。お兄様は優しいんですが、お父様とお母様が流行り病で亡くなってしまってからは、やはり私も寂しかったんです。ニーナ様、ここを我が家だと思って、おくつろぎくださいね」
あの場で、人の悪意を一身で受けた私にとっては、彼女の親愛は涙が出るほど嬉しかった。
「おーい、マリア! 街で打ち合わせがあったから、焼き立てのマフィンを買ってきたぞ。おやつに、ニーナを誘って3人で……なんだ、もう始まっていたのか!」
そう言ってフランツ様が、ベランダのお茶会に顔を出した。
公式の場では、まさに大貴族の当主として振舞う彼も、こういうプライベート空間なら、私が昔からよく知っている幼馴染の気さくなお兄さんの顔になる。
今日は、朝から商工ギルドの幹部と打ち合わせのお仕事をしてくると言っていた。だから、お土産にお菓子を買ってきてくれたのね。
「うわ~、いい香り。ありがとうございます。お兄様! 今日は、お仕事は終わりですか?」
「いや、まだまだ書類がたくさん残っている。少しサボりに来ただけだよ」
「まぁ、お兄様ったら、ふふふ」
ああ、なんて幸せな時間だろう。
皇太子様の婚約者になってから、マナーや外国語の勉強、宮廷行事などで心が休まる暇がなかった。
マリアや後輩たちとは、仲良くやっていたが、同級生の一部は私をライバル視してきていろんな嫌がらせや陰口をたたかれた。
だからこそ、気心知れたふたりとこうやってお茶を飲むのがどうしようもなく幸せすぎるわ。
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