兄妹の会話

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 そううながされて、私は紅茶を一口飲む。紅茶の素晴らしい香りの後に、フルーツの甘さが口に広がる。  これはジャムね。ジャム入りの紅茶なんだわ!! それも、隠し味でジャムにワインが混じっているのね。だから、香りが引き立つんだわ。 「美味しい。心が満たされるような素敵な香りね」 「それはよかった。店主として最高の誉め言葉です」  私たちの後ろにはクランベールさんが立っていて、満足そうに笑っている。 「これは、イチゴジャムを入れた紅茶なのね」 「はい、北の大陸の寒い場所に住む人たちの飲み方なんですよ。極寒のなかで、体を温めつつ、保存できるジャムで貴重な栄養を取ることができるので」 「店主さんは、博識ですね」  さすがは、辺境伯領の元官僚ね。 「褒めていただき恐縮です。それではごゆっくり……お茶のお代わりは、1杯まで無料ですので、おくつろぎください」  店主さんはにこやかな笑顔で去っていく。 「すごい店主さんね」
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