937人が本棚に入れています
本棚に追加
「ええ、官僚時代は、相当やり手な財務官僚で、亡くなった父も重宝していたんですわ。お兄様も『クランベールには復帰してもらいたいんだけどね。本人は今の生活に満足しているようだから無理強いできないよな』と残念がっているんです」
※
「とても美味しかったですわ、クランベール」
「マリア様に褒めてもらえるのが、このクランベール最高の幸せですな」
ニーナ様には先に馬車に行ってもらい、私はお会計をするために、クランベールと談笑していた。
「ニーナ様も、あんな風に笑うことができる方だったんですね」
「あら、やっぱり知っていたのね」
「ええ、亡き領主様の付き添いでパーティーに出て、何度かお見かけしたことがありますよ。身分が身分ですから、きちんとご挨拶したことはありませんでしたが……」
「ニーナ様は、ずっと重荷を背負っていましたから」
「ええ、だから、マリア様とあんなふうに年相応の少女のように笑いあっている姿を見て、私もホッとしました」
「そういえば、今日の紅茶のジャムは、イチゴだったのね。いつもはマーマレードなのに」
「イチゴの花言葉を知っていますか、マリア様?」
「知らないわ」
最初のコメントを投稿しよう!