悪役令嬢として婚約破棄された私は、大貴族で幼馴染の先輩に助けられて辺境で溺愛される

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 数日後。 「ニーナ、今日はありがとう。とても助かったよ」  私は、フランツ様の仕事の手伝いで街まで出てきていた。仕事も終わってもう夕暮れ時になってしまった。 「いえ、居候の身ですから、少しでも役に立ててよかったです」  隣国のヴォルフスブルク帝国の外交使節が、通商問題を話し合うために、辺境伯領に来訪したが、通訳の者が病気になってしまったので、私が代理を務めたのだ。将来の皇后になるために、語学の勉強をたくさんしていたことが役立った。  久しぶりにちゃんとドレスを着て外出したわ。ピンクのドレスは、彼が用意してくれたものだけど似合っているかな…… 「それにしても、流暢なヴォルフスブルク語だったね。使節の人たちも驚いていたよ」 「必要に迫られて、勉強したのが良かったかもです」  比較的勉強は得意なほうなんだけど、語学が一番得意だった。先生からもよく褒められたし……  語学だけならフランツ様より上かもしれない。 「そうだ、ディナーでも食べていこうか! よく使うお店が近くにあるから……」 「でも、マリアが待っているんじゃ……」 「大丈夫。マリアは、『ふたりで夕食でも食べてきたほうがいいわ。ちゃんとお礼をしないといけないから!』と言っていたしね」 「なら、お言葉に甘えて……」  私たちは、雰囲気のいいレストランで食事をする。  これじゃあ、まるでデートみたいじゃない!!  勘違いしては、ダメ。  あくまで、これはお礼なんだから。 「ここはカジュアルだから、よく使うんだ。貴族として格式張るのは公式の場だけでいいと思ってね」  そう言って、彼はスマートに私が座る椅子を用意してくれる。 「素敵なお店ですね」 「そうだろう! ニーナも18歳になったから、ワインは飲めるよね? 安いけど美味しい飲みやすいワインを頼もうか!」  この国では、18歳から成人だ。私も宮廷マナーのために、少しはワインを飲むことがあった。 「はい、あまり強くないので、飲ませすぎないでくださいね」 「わかった。なら、ヴォルフスブルクの貴腐ワインを頼もう。甘くて飲みやすいからね」  よかった。苦くて重厚なワインだったらどうしようかと……気配りされるのが嬉しい。皇太子様はこういう時は、自分が飲みたいものを頼んでいたから……  注がれたワインを私は一口飲んだ。ぶどうジュースみたいにとても甘くて飲みやすい。前菜のチーズ料理ともよく合う味ね。 「どうも皇太子様は大変なことになっているらしい」 「えっ?」  お酒が進んだ後、彼が突然、そう言った。 「ヴォルフスブルクの外交使節から聞いたんだ。皇太子様とその付き添いの女性、あんまり名前を聞きたくはないと思うけど、メアリ男爵令嬢のことだと思う。彼らが外交使節団の接遇を担当したらしいが、かなりめちゃくちゃだったらしい」 「めちゃくちゃというと?」 「男爵令嬢がわがまま放題で、皇太子様もそれを黙認して、酔ったふたりで外交使節の歓待パーティーを大宴会に変えてしまったとか……令嬢がスラングのような言葉を使節団に浴びせかけたとか聞いたよ」 「それ、大丈夫なんですか? ヴォルフスブルク帝国と言えば、大陸屈指の陸軍大国ですよね……」 「あと一歩で国際問題になるところだったらしい」 「……」  聞いているだけでヒヤヒヤする話ね。 「使節団の団長様も『どうして、皇太子様は、ニーナ様のような才媛との婚約を破棄し、あの娼婦(しょうふ)みたいな女と付き合いだしたんだ。この帝国は大丈夫なのか?』と本気で心配していたよ」  嬉しいような悲しい話だ。 「おっと、面倒な話をしてしまったね。そろそろメインの時間だ。ニーナが好きなビーフシチューにしてもらったからね。ここのビーフシチューは絶品だよ!」  楽しい食事が再開される。  この国の未来を考えると不安だけど、今日くらいは忘れよう。美味しい食事とワインに酔いしれた。
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