辺境伯兄妹

38/59
前へ
/182ページ
次へ
「皇太子よ。さきほどの、重要な会議を休んで何をしておったのじゃ? 魔獣対策の緊急会議を」 「申し訳ございません。急に体調が悪くなりました。今は大丈夫です」 「……もう少し、将来の皇帝としての覚悟と自覚を持て」  相変わらず、口うるさい父親だ。どうせ、会議だろう? 俺がいなくたって、話が進む。なら、めんどくさいだけじゃないか。 「申し訳ございません。その件も含めて、陛下にお願いしたいことが……」 「なんだ?」 「私を、魔獣対策部隊の指揮官に任命してください! 魔獣の出現は、帝国の安全保障において、もっとも重要な問題です。民も不安になりましょう。そこで、私が皇族を代表して、総大将として(おもむ)けば、帝国全体の士気も上がりましょう。不安に沈む辺境伯領の民も勇気づけられるものです!」  最近、失敗続きだったからな。俺はこういう華々しい場所を求めていたんだ。フランツも辺境伯軍では対処できずに、帝国軍本隊に応援を求めているのもいい。最高だよな。  あの自信満々のフランツが、俺に助けを求めている。その事実は、俺のプライドを満たすものだからな。  戦場で大活躍して、俺たちを馬鹿にしていた奴らを見返してやる。  そうすれば、ニーナも俺の持つ本当の価値に気づくだろうな。  あいつらには、俺が将来の皇帝という事実を突きつけてやる。 「しかし、お前は実戦経験が少ないじゃないか。援軍の指揮監督は、ルーゴ将軍に任せるつもりだが……」 「陛下、お言葉ですが、ルーゴ将軍は、すでにご高齢です。私たち、新しい世代が帝国の未来を切り開いていかなくてはいけません!」
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

935人が本棚に入れています
本棚に追加