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そして、私たちは砦の方で、皇太子様が率いる軍隊とも合流した。
彼は、私を一瞥して、そのまま何も言わずに通り過ぎた。
さすがに気まずいのよね。すごく嫌そうな顔をしていたから……
周囲の人たちもその様子を驚くように見つめていた。
あんな顔されたら、少しは傷つくわよ。私だって、会いたくて来ているわけじゃないのに……
「とりあえず、辺境伯様の意見も聞きたいな。皇太子殿下、すぐに軍議を開きましょう」
参謀のチャーチル少将が、提案した。私たちも同意した。
皇太子様だけが不機嫌そうな顔をしていた。
※
「――これが、現状のヴォルフスブルク帝国の魔獣対策です」
フランツ様が状況を解説する。
「なるほど……すでに、魔獣包囲網による封じ込めは限界にきているんですね。そして、魔力の滞留場所は、魔獣の増加によって未だにわからない。手詰まり状態ですね」
少将もすぐに状況を把握してくれたらしい。さすがは、グレア帝国軍の若き天才ね。フランツ様と同じくらい名声を持っていて、38歳で少将の地位まで登りつめた名将。帝国軍史上でも、皇室と辺境伯領当主を除けば、最速の出世スピードを誇っている。
帝国の次世代の双璧をそろえたということは、陛下もことの重要性が分かっているということね。
「フランツ閣下は、今後、どう対応するべきと考えているのですか?」
チャーチル少将は、より深い議論に持っていくつもりね。
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