真夜中の流星群

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 高校を卒業したら、確実に叶えたいことがあった。  それは、彼女を作ること。  地元での高校生活は、恋愛と無縁だった。ただひたすらに部活に打ち込み、現を抜かすことはしなかった、いや……できなかった。  女友達は幾らかいた。でも、それ以上はない。顧問の先生に止められていたからだ。 「黒島は全国を目指せるんだから、部活に集中しなさい」  卓球部だった俺は、その通りだと思って従った。  小学生から打ち込んでいた卓球が何よりも大好きで、誰かと付き合いたいという潜在意識は胸の奥に封じ込めていたのだ。  まあ、そもそもモテるような容姿ではないと自覚していたし、卓球の腕前以外の自信もそこまでなかった。  高校生活は全て部活に捧げようと、最初から誓っていたのだ。  しかし、思っていたよりも、現実は残酷だった……。    青春の全てを捧げた卓球。高体連、最後の大会。  俺はあっけなく、予選一回戦で敗退した。個人の成績は、過去最低の結果。  ここ一番でプレッシャーに勝ち切れず、そんなに前評判は高くなかった一年生に負けた。  努力は裏切らないという言葉を胸に生きてきたのに……誰かを憎みたくて仕方がなかった。でも、どうすることもできない。  神様には、頑張っても会えやしない。  もし神様がそこにいるなら、「嘘つき」と暴言を吐きたいくらいだ。  もう卓球は終わりにしよう。  次のステップでは、自分が楽しいと思えるような、欲のままに生きよう。  ワガママにだってなるし、やりたいように生きる。そう誓って、東京の大学に進学してきた。
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