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「黒島君、そのカメラ見せて」
「え? あ、ああ、いいよ」
色白で透明感丸出し。髪はストレートのブラウンベージュで、鼻筋が通っているのが特徴的だ。唇が大きく、笑う時は口角を上げて大きく笑ってくれる。
まさにハーフ美人みたいな女性だった。
最初に双葉から名前を呼ばれて、まだ使いこなせていないカメラを貸した時から、すでに心臓は悲鳴を上げていた。
「私もミラーレス買おうかな。今一眼レフだからさ、こういう手軽なやつも欲しいんだよね」
大した知識がないのも相まって、「そうなんだ」としか返せなかった。
口をパクパクさせながら、何か言わないとと焦っている自分が恥ずかしい。
「っていうか、黒島君と初めて話したよね?」
「……そ、そう言えばそうだね! よ、よろしく……」
本当はずっと意識していたのに、『そう言えば』なんて誰が言っているんだと、自分が自分で可笑しく思えた。
気にする素振りも見せない双葉は「うん! よろしく!」と言って、白い歯を見せて笑ってくれる。
高嶺の花が話しかけてくれたことで、幸せになった。
高校の時、一度は恨んだ神様を許すことにした。
――友達と呼んでも違和感はないくらいの関係になって、半年くらいか。
すっかり大学生活や一人暮らしにも慣れてきた時に、とあるイベントが企画される。
「夏の星空合宿?」
北沢はサークルの先輩から聞かされた情報を、夕方の空いている学食のテーブルで話し出した。
「どうやら毎年あるらしくてな。みんなで奥多摩の方まで行って、星空を撮るらしいぞ」
「北沢は行くの?」
「当たり前だろ。出れるイベントには全部顔を出せ……これが親からの助言だ」
「しょーもない家族だな」
北沢は自慢の長髪を耳にかけながら言った。
俺と北沢の漫才のようなやり取りは、サークル内でも名物になるほど人気だった。
「黒島も行くだろ?」
「うーん……」
元々、そういうのに進んで参加するタイプではないけど……自分を変えるためにサークルに入ったのだ。
めんどくさい気持ちと義務感が、心の中で葛藤している。
すると見兼ねた北沢は、俺の心情を読んでいるかのようにボソッと呟いた。
「宮館双葉も来るってさ」
さらに北沢が念を押して「来るよな?」と聞く。
困ったような仕草や表情をするけど、もう答えは決まっている。
「……まあ、別に行ってもいいけど」
これまた演技くさい。
北沢の「そうこなくっちゃ」を気怠そうに「おう」と返して、激しくなった胸の鼓動を必死に隠した。
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